SECの権限強化で証取法改正へ=株式市場の信頼回復目指す
財務省は、早ければ3月18日の定例閣議に証券取引等監視委員会(SEC)の権限強化に向けた証取法改正法案を提出する。SECに刑事事件の捜査権を持たせ、検察に起訴を求める権限を付与する内容。緊急勅令の形で制定することで、国会での審議を経ることなく官報公示後ただちに施行できるようにする考えだ。
政府は、株式市場における不正行為による損害を抑え、投資家の信頼を取り戻したい考え。タイ株式市場はさまざまな問題に直面し、株価が低迷している。特に世界的な要因としては、トランプ大統領の政策が国際市場に不安定要因をもたらしている。一方、国内では経済が低迷し、成長率はアセアン諸国の中でも最も低い水準にとどまっている。タイ株式市場の銘柄構成が「オールドエコノミー」に集中していることも、魅力の低下につながっている。
こうした状況下での最大の問題は、上場企業における数々の不祥事や不正行為で、それが投資家の信頼の喪失を招いている。財務管理の失敗による資金繰り難、過剰投資による債務負担に加え、資金の不正使用といった問題が横行している。企業の不正行為が市場の混乱を招き、投資家がタイ市場を敬遠する要因となっている。
問題は不正を行なった企業にとどまらず、株式市場を通じた資金調達全体にも影響を及ぼしている。銀行融資や社債市場もこの影響を受けており、投資家が市場の健全性に疑問を抱く要因となっている。また、度重なる不正事件により、市場参加者は、当局の対応が十分でないと感じている。
SECの権限強化の背景には、過去に発生した企業不祥事がある。モアリターン社(MORE)の株価操作、スターク・コーポレーション(STARK)の粉飾決算、オールインスパイア・デベロップメント社(ALL)の資金繰り破綻、JKNグローバル・グループ社(JKN)のデフォルト、イタリアンタイ・デベロップメント社(ITD)の資金繰り難による社債償還繰り延べ、サバイ・テクノロジー社(SABUY)の主要株主による株式売却による株価急落などが投資家の信頼を喪失させた。
そこで、財務省はSECの権限を拡大し、より迅速かつ厳格な法の執行を可能にするための法改正を進める。特定の刑事事件については警察庁や特別事件捜査局(DSI)と協力しながら、SEC自らが捜査および起訴できるようにする。投資家の保護を強化し、市場の透明性を確保するための重要なステップになる。
SECのポーンアノン・ブッサラトラクン事務局長[=写真]は「改正法の施行により、株式市場の不正行為を迅速に取り締まることが可能になる。特に、STARKのように大規模な損害を投資家に与えたケースでは、SECが積極的に介入し、法的措置を講じる」と述べた。

◇タイESGエクストラファンド
政府は11日に開いた閣議で、個人所得税控除対象の投資信託「タイESGエクストラ・ファンド」を承認した。投資家は最高で90万バーツの税控除を受けることができる。長期株式投資ファンド(LTF)を保有する投資家が、資産をタイESGエクストラ・ファンドに移すことが可能となる。LTFからの資金移動を行なった場合、最高で50万バーツの個人所得税控除が適用される。税控除の内訳は、初年度に30万バーツ、2年目から5年目にかけて毎年5万バーツずつ控除される仕組み。
LTFを保有する投資家は、全額をタイESGエクストラ・ファンドに移行する必要があり、部分的な移行は認められない。移行を希望しない場合は、特に何も対応をする必要はない。さらに、新たにタイESGエクストラ・ファンドに投資する場合は最大30万バーツが所得税控除の対象となる。タイESGエクストラ・ファンドの30万バーツの控除枠は、既存のタイESGファンドとは別枠で設定される。
ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は、LTFに投資する投資家の多くが、待ち望んでいた措置であり、LTFをタイESGエクストラ・ファンドに切り替えて、追加の税控除を受けるのは投資家にとって、賢明な選択だ」と述べた。
タイ証券取引所(SET)のSET指数は6、7か月前には1400~1500ポイントで推移していたが、現在は1200ポイントを下回るまで下落している。市場の競争力の低下が、空売りや高頻度取引(HFT)による売りを招いている。
ピチャイ副首相は、ESG株での資産運用は持続可能な投資であり、市場のトレンドに合致すると述べている。ポーンチャイ・ティラウェート財政局長によると、この政策による税収減は5年間で約500億バーツに達すると試算されている。財政局の分析では、LTFの残高は約1800億バーツで、その75%にあたる1350億バーツがタイESGエクストラ・ファンドに移行すると予測されている。同ファンドへの新規の投資は300億バーツを見込んでおり、合計1650億バーツが税控除の対象になると試算した。
投資家はこの新設ファンドを通じて、税控除の恩恵を受けながら、持続可能な成長が見込まれる企業に投資できるようになる。税控除を受けるための投資口の保持義務期間は5年間。
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