2026年4月23日(木)号

タイの格付見通し「安定的」=ムーディーズが引き上げ

 エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相は4月21日、ムーディーズ・インベスターズ・サービスがタイのソブリン格付見通し(アウトルック)を「ネガティブ」から「安定的(ステーブル)」に引き上げ、格付を「Baa1」に据え置いたと明らかにした。今回の見通しの引き上げは、タイ経済に対するリスクバランスの改善と、国の経済政策の方向性に対する信頼を反映したものと説明した。
 ラチャダー・タナディレーク政府報道官[=写真]は22日、アヌティン首相が歓迎の意を示したと明らかにした。首相は、タイ経済の基礎体力と政府の政策運営に対する信認が反映された形だと述べた。


 ラチャダー氏によると、見通し引き上げの背景には、内外要因を踏まえたタイ経済の安定性の高まりがある。政治の安定と政策の継続性が不確実性を低減し、中長期的な経済改革を後押ししている点が評価された。また、政府の各種支援策により民間投資も回復基調にあり、「タイランド・ファストパス」などの施策が雇用の創出や将来の成長を支えている。財政による刺激策により政府債務は増加傾向にあるものの、依然として管理可能な水準にあり、全体の安定性を損なうものではない。さらに、外貨準備の厚みなど対外健全性の強さも、外部ショックへの耐性として評価されている。
 2026年の対内直接投資信頼度指数「The 2026 Kearney FDI Confidence Index(FDICI)」では、タイは再び世界上位25か国に復帰した。2年連続で圏外となっていたが、投資先としての魅力が回復していることを示している。背景には、政府がデータセンター、EV、クリーンエネルギーなど成長分野を対象に優遇措置を拡充したことや、インフラ整備と投資環境の改善を進めていることがある。これらの取り組みが投資家心理の回復に寄与した。
 ムーディーズによる見通しの引き上げとFDICIでの順位回復は、タイに対する海外投資家の信頼が着実に持ち直していることを示している。経済の安定性と政策の方向性の両面で評価が高まりつつあり、今後の投資誘致や経済成長、国際競争力の向上を支える要因となる見通しだ。アヌティン首相は、「足元の経済的影響を注視しつつ、安定性の維持と将来に向けた基盤整備を同時に進める」と強調し、中長期的に持続可能で力強い成長の実現を目指す姿勢を示した。
 エークニティ副首相はムーディーズが挙げた主な理由について、以下のように説明した。
 1.政府の安定性と政策の継続性
 政府の安定により、これまでタイ経済のマイナス要因となっていた政治的不確実性が低減した。これにより、新たな経済成長のエンジンを創出するための経済改革に向けた政策の継続性が裏付けられた。今後、ビジネスを容易にするための規制緩和や、競争を促すエネルギー市場の自由化といった構造改革が計画通りに進めば、経済成長と財政基盤の段階的な改善が期待できる。
 2.外部リスクの緩和
 外部要因によるリスク、特に米国の相互関税(Reciprocal Tariff)を巡る不確実性が交渉を経て解消された。タイ製品に対する関税率は周辺諸国と同等の水準に調整された。また、世界的なエネルギー価格の高騰がタイ経済や政府債務の負担増につながる懸念はあるものの、そのリスク水準は同格付の国々(ピアグループ)と比較しても許容範囲内にあると評価された。
 3.民間投資の継続的な回復
 BOIへの認可申請額の増加に加え、政府の支援策「タイランド・ファストパス」が功を奏し、昨年第4四半期から民間投資が加速している。投資は、これまでタイ経済の弱点と見なされていた長期的な経済成長ポテンシャルを構築するための重要な鍵となる。
 4.公的債務水準と債務支払い能力
 経済の回復を支援するための赤字財政政策の結果、公的債務の対GDP比は2026年度に60%、2028年度には62%に上昇すると予測されている。しかし、タイの債務支払い能力は依然として良好な水準にある。国内の株式市場と債券市場には十分な厚みがあり、あらゆる経済サイクルにおいて政府の資金調達を支えることが可能だ。また、債務の大部分がバーツ建てで、平均償還期間も比較的長いため、債務管理が容易な構造となっている。なお、政府収入に対する利払い費の比率は、2026年度に6%となる見込みで、これは同格付の国々と比較しても低い水準にとどまっている。
 5.強固な対外経済地位
 タイは依然として強固な対外資産を保持しており、外貨準備高も高水準にある。2026年3月時点の外貨準備高は238億㌦を超え、輸入額の約7か月分に相当する。また短期・長期債務の対外貨準備高比率は、2026年に約45〜50%になると予想され、外部要因による変動を十分に吸収できるレベルとなっている。
 6.ムーディーズによる今後の注視ポイント
 ムーディーズがタイの格付けを検討するうえで今後重要視する要因は、①同格付の国々と比較したタイの経済成長ポテンシャル、②構造改革の進展状況、③財政管理と政府債務の状況などとなる。
 今回のタイの格付評価結果は、政府が短期的影響を緩和するためのターゲットを絞った財政支援(Targeted Fiscal Support)を行ないながら、同時に投資の加速、経済構造の調整、生産性の向上を図り、長期的な成長ポテンシャルを高めようとしている経済政策の方向性に対し、信頼が得られていることを示している。
 今後、格付会社は政策の継続性と、その施策がどれだけ実効性を持つかという政策執行(Policy Execution)の結果を主眼に置くことになり、これが将来的なタイの格付見通しを評価する重要な鍵となる。
 エークニティ氏は、「今回の格付見通しの引き上げは、タイの経済基盤と安定性は引き続き強固で、政府が進めている政策指針が正しい方向にあることを反映している。短期的には国民と経済をピンポイントでケアしつつ、長期的には新たな経済成長のエンジンを加速させることに注力している。今、最も重要なのは、政策を継続的に推し進めて着実な成果を出し、タイ経済の成長ポテンシャルと強靭さを長期的に高めていくことだ」と語った。

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