1570億Bの経済刺激予算=各省提案の選定作業始まる
政府は経済のファンダメンタルズの強化を優先し、デジタルマネー政策の実施を先送りする。確保した予算1570億バーツは、治水、交通、観光、草の根経済の4分野に関連するインフラ整備・活性化事業に振り分ける。事業予算が50万バーツ未満の案件を対象から外すなど、経済活性化事業選定委員会が選定作業を進めている。当初は、経済活性化事業政策委員会(委員長:ペートンターン首相)による最終審査を6月11日に予定していたが、選定作業が間に合わず、会合は18日に延期された。検討対象の事業は1万件を超え、総予算は4000億バーツ以上に上っており、絞り込みが求められている。
チュラパン・アモンウィワット財務副大臣は、政府が1570億バーツ規模の経済刺激策を検討しており、雇用の創出、生産の拡大、投資の促進を目的としていると説明した。この予算は当初、デジタルマネー給付に充てる予定だったが、投資中心の刺激策に振り替えた。現金給付は短期的に経済に資金を注入できるが、投資プロジェクトは経済を刺激し、長期的な構造改革にも寄与するとしている。
現在、政府機関からのプロジェクト提案は4000億バーツに達しており、厳格に審査する必要があるという。プロジェクト審査委員会は、初期段階で1件あたりの投資額が50万バーツ未満のプロジェクトを除外する方針。調達方法において透明性が欠ける可能性があると理由を説明している。
ヂラユ・フアンサップ政府報道官は、憲法第144条に基づく閣僚・官僚らの利益相反の禁止を含む各種の法規制に抵触しないよう、予算局をはじめ関係機関が連携し、慎重に選定作業を進めていると説明した。首相は事業推進に伴う汚職の発生を強く警戒しており、閣僚や高官に対して、そうした問題が決して起きないよう厳しく監督するよう指示したという。
選定委員会を統括するピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は、選定基準の厳格な運用を最優先とし、拙速な判断を避ける姿勢を強調している。治水事業では、対象地域を洪水や旱魃の発生頻度が高い場所に限定する、交通事業では物流機能の向上にどの程度寄与するかを厳しく審査する、といった具体的な基準の導入を検討しているという。また、事業に必要な物資やサービスの調達に関しては、納入業者の選定基準を標準化することで、選定の効率化を図る構想も示している。
チュラパン財務副大臣は、トランプ関税がタイ経済に及ぼす影響は、第3四半期にはっきりしてくると述べている。90日間の猶予期間があるため、影響はまだ見えておらず、タイの輸出は第2四半期も伸びが加速している。チュラパン氏は、「米国との貿易交渉が始まれば、状況はより明確になるはずだ。交渉は近く行なわれ、順調に進めば悪影響を軽減できるかもしれない」と話している。
同氏によれば、確実なことの一つは、米国がすべての輸入国に対して課している10%の関税が存在する点。米国がタイに課す税率が競合国より高くならないように交渉することは可能だと述べている。
タイは今年4月に米国から36%の関税を課されたが、現在は90日間の猶予期間にある。チュラパン氏は、米国の税制措置は、世界貿易機関(WTO)協定を含む多国間協定を破棄するに等しいものだと批判している。
富士フイルムが医療技術出展=AACRTで最新X線機披露
富士フイルム(タイランド)社は、第25回アジア・オーストラリア放射線技師会議(AACRT2025)において、最新のX線検査技術を出展した。世界中から放射線医学の専門家が集まるこの国際会議では、医療現場の最前線で活用される最先端技術の現状や今後の展望について、活発な情報・意見交換が行なわれた。
同社は近年、「ワンストップ&トータルヘルスケア・ソリューション」を掲げ、放射線医学の医療現場におけるX線撮影技術の研究開発に注力している。今回の会議では、主に以下の製品を出品した。
「FDR Xair」は、重量わずか3.5kgの携帯型レントゲン装置で、野外でも容易に使用できることから、医療機関の届きにくい地域への持ち込みにも対応可能。結核などの肺疾患の画像分析にはAIを導入し、診断精度の向上を実現している。
さらに、最新型の超音波診断装置「ARIETTA 750 DeepInsight」も出品。自社開発の「ディープインサイト」技術による鮮明な画像生成が特長で、AIによる画像処理により解像度が飛躍的に向上した。特に、BMIが高く従来の超音波検査では画像が得にくかったケースでも高精細な映像を提供し、会場でデモ画像を見た放射線技師らからは驚きの声が上がった。
このほか、タイ国内で初披露となるデジタルマンモグラフィ装置「Amulet Sophinity」も展示。低線量ながら高画質な画像を提供し、受診者と操作者双方の負担軽減を実現した。AIを活用したワークフローの改善や、乳房の断層画像を3次元的に取得できるトモシンセシス機能を搭載し、より正確で効率的な診断を可能にしている。
乳がんは、タイ国内のがん患者全体の34.2%を占める最大のグループであり、こうした技術が導入されれば、乳がん診断・治療体制において大きな進展が期待される。
また、デジタルX線撮影装置「FDR Visionary Suite」も出品。低線量で鮮明な画像を得られるだけでなく、自動・手動の切り替えが可能で、オペレーターによるポジショニングの制御が容易。照射野リンク機能により、撮影部位に応じて照射野サイズが自動設定され、検出器との位置合わせも自動で行なわれるため、撮影の効率が格段に向上するという。
丸尾窓社長[=写真]は、同社の技術がタイ国民の健康増進や早期治療に貢献しうるもので、今回の国際会議の主旨とも合致していると強調。とりわけAIによる画像解析精度の向上が治療効果の改善に大きく寄与するとの認識を示し、「乳がん、肺がん、結核など、タイ国民の健康を脅かす“沈黙の脅威”に対抗するため、今後も技術にさらに磨きをかけていく」と述べた。

なお、在チェンマイ日本国総領事館の発表によれば、6月10日、日本政府による草の根・人間の安全保障無償資金協力による「タイ北部HIV・合併症巡回検査のための医療体制向上計画」の引渡式典が執り行なわれ、原田優在チェンマイ日本国総領事をはじめ、チャッチャワーン・パンヤー・チェンマイ県副知事、丸尾社長、そしてポンピーラ・パッピーラポン・エムプラス財団所長ら関係者が出席した。
エムプラス財団は、検査用車両でチェンマイを中心としてタイ北部各地を巡回し、遠隔地を含む地域住民を対象に無償でHIVや性感染症の検査サービスを提供している。しかし、巡回に使用できる車両は1台のみで、需要に十分に対応できず、サービスを実施できていない。さらに、HIV検査結果が陽性の場合には、X線検査機を用いて速やかに結核等の合併症の検査を行なう必要があるが、巡回サービスで訪れる遠隔地は、X線検査機を所有する病院から遠く離れており、検査陽性者への対応が困難な状況にある。こうした問題を解決するため、巡回検査用車両1台の追加整備と検査陽性者への合併症の即日診断を可能にするポータブルタイプのX線検査機1台の整備が喫緊の課題となってた。
日本政府は、エムプラス財団に対して総額413万4000バーツの支援を行ない、現在同財団が所有する検査用車両1台に加え、1台を追加整備し、新たに富士フイルム製のポータブルX線検査機を供与した。今回の協力により、同財団の即日検査・治療体制の向上を図り、チェンマイ県民と近隣県民の安全・安心な暮らしに寄与することが期待されている。
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