2026年5月18日(月)号

中国・日本・欧州EVメーカーと連携=「Smart & Green Mobility」推進

 投資委員会(BOI)は5月13日、中国、日本、欧州の主要EVメーカーを招き、BOIシンポジウムを開催した。xEVとスマートモビリティ技術を包括的に支援する政策を通じ、タイを「スマート&グリーン・モビリティ」へと導く未来像を提示した。EV関連産業への投資額は1800億バーツを突破しており、東南アジアのEVハブとしてのタイの地位を改めて印象付けている。
 「Thailand Driving Toward Smart and Green Mobility」をテーマとする同シンポジウムはSUBCON Thailand 2026の会場で開催された。中国のEVシンクタンク「China EV100」に加え、タイに進出している中国、日本、欧州の自動車メーカー、部品メーカーの経営陣が参加し、スマート&グリーン・モビリティ時代への移行が進むなかでの自動車産業の方向性について議論した。
 ナリット・トゥードサティラサック事務局長[=写真]によれば、シンポジウムでは、将来技術、サプライチェーン、タイ企業が世界のサプライチェーンへ参入する機会などについても意見交換が行なわれ、タイを地域の次世代自動車産業のハブに押し上げる方策が示された。会場には投資家や関係者ら500人以上が参加した。


 ナリット事務局長は、「Policies to Accelerate Smart and Green Mobility」をテーマに基調講演を行ない、世界の自動車産業がEV、スマートモビリティ、デジタル技術の時代へと移行していると指摘した。これは「ACES」と呼ばれ、「Autonomous(自動運転)」「Connected(コネクテッド)」「Electric(電動化)」「Shared Mobility(共有型モビリティ)」で構成される。こうした変化により、ソフトウェア、電子機器、バッテリー管理システム、先進運転支援システム(ADAS)が競争力を左右する重要要素になっていると説明した。
 そのうえで、これまで築いてきた強固な自動車産業の基盤を活用し、次世代自動車の総合生産拠点へ発展する大きな機会がタイにはあると強調した。特に、「グリーンモビリティ」と「スマートモビリティ」を一体で推進することが重要だと述べた。
 中東危機による世界的なエネルギー価格の上昇は、EVへの移行を加速させる要因となっている。「グリーンモビリティ」は単なる環境問題ではなく、エネルギー安全保障や国の競争力にも関わる課題であることが明確になっている。このためタイ政府は、EV普及、エネルギー効率の向上、クリーンエネルギーの振興を重視し、長期的なエネルギー安全保障と経済の強靭性強化を目指している。
 ナリット事務局長は、タイは自動車産業の転換の流れを追うだけの存在ではなく、主導する立場を目指していると述べた。あらゆるタイプのEVメーカーや先端技術部品メーカーなど、世界の主要企業をタイに誘致し、生産・輸出拠点として発展させていくと語った。
 さらにBOIは、タイ企業が世界のサプライチェーンに参入できるよう支援を重視していると説明した。自動車産業の主要4団体と協議を行ない、次の段階の支援策を策定中で、タイ国内の自動車メーカーの支援継続、国産部品使用率の引き上げ、タイ企業の競争力の強化などを進める方針だ。最終的には、タイを地域の次世代自動車産業のハブへと押し上げることを目標としていると強調した。
 2017年から2026年3月までに、EV関連の投資申請額は累計1820億バーツを超えた。EV、バッテリー、主要部品の生産と充電ステーションが含まれる。タイが地域の主要EV生産拠点として世界の企業から高い信頼を得ていることを示している。
 中国EV100の会長は、世界の自動車産業が現在、EVへの移行における「加速段階」に入っていると指摘した。2030年にはEVが世界販売台数の45%、4300万~4500万台を占めるとの見通しを示した。さらに、EVは単なる車両ではなく、AI、クリーンエネルギー、デジタルサービスを融合した「テクノロジープラットフォーム」へ進化していると説明した。価値の中心はエンジンやハードウェアから、ソフトウェアやサービスのエコシステムへ移行しつつあるという。
 一方で、バッテリー、半導体、自動運転技術、国際標準などの分野における各国間協力が、今後の産業発展の鍵になるとの見方を示した。
 「Global Smart Mobility Transformation: Technology, Supply Chain and Thailand’s Strategic Position」をテーマとしたパネル討論では、タイEV協会(EVAT)、BYD、バレットラックス、いすゞ、ボッシュ、オートリブの幹部が登壇した。タイは技術革新と並行して自動車産業を発展させる必要があるとの認識で一致した。
 EVATのスロート・セーンサニット会長は、次世代自動車産業は単に自動車生産にとどまらず、技術、エネルギー、データ、持続可能性によって駆動される産業システムへと移行していると述べた。重要なのは、基準・試験制度、エネルギーインフラ、高度人材育成に至るまで、包括的なEVエコシステムを構築することだと指摘した。
 タイの部品メーカーは従来型部品の生産から、高付加価値のテクノロジー部品へと転換を急ぐ必要があると指摘。世界的な技術開発企業との連携を深め、イノベーション投資を本格化させることで、タイが製造拠点としての競争力を維持し、今後10~15年で地域のEV・グリーンモビリティのハブに発展できるとの見方を示した。
 BYDのタイ法人、BYDオート(タイランド)のGMは、タイの自動車産業がエネルギー問題や燃料コストの上昇を背景に、xEV時代への移行を加速していると述べた。タイは今後のxEV普及に対応するため、バンコクだけでなく地方部も含めて充電ステーションの整備を急ぐ必要があると指摘した。
 また、産業構造をクリーンエネルギー、自動車、ソフトウエアを融合した形へ高度化し、スマートモビリティのハブを目指すべきだと提案した。さらに、プラグインハイブリッド車(PHEV)がタイの自動車産業の新エネルギー移行期における重要な鍵になるとの見方を示し、政府に支援拡大を求めた。
 PHEVは使用部品点数が多いため、国内の製造基盤の維持や自動車部品産業の振興に寄与するほか、タイの企業が次世代自動車技術へ円滑、持続的に適応する助けになると説明した。
 バレットラックスのコーポレートパートナー部門の副社長は、今後3年間でAIが自動車産業の変革を牽引する重要な原動力になるとの見方を示した。AIはスマートカー開発、充電システム、リチウム電池技術などを幅広く高度化し、次世代のスマートカーの発展を本格的に加速させると述べた。
 一方で、地政学リスクや貿易戦争の影響により、世界のサプライチェーンは不安定な状況が続いており、生産拠点は東南アジアへの移転を加速していると指摘。タイはその中長期的な主要拠点の一つになっていると語った。
 また、xEV産業の発展には、エネルギーシステムの整備を並行して進める必要があり、特にクリーンエネルギーやバイオマスエネルギーの開発が、将来の競争力を左右する重要な要素になるとした。タイはクリーンエネルギーと新興技術を包括する産業のサプライチェーン整備を急ぎ、グリーンモビリティ産業の持続的成長を後押しする必要があると述べた。
 トリペッチいすゞセールスのバイオ燃料専門家は、タイの強みとして、開放的な政府の政策と明確な実行計画、さらにTier1からTier3まで整った強固なサプライチェーンを挙げた。一方で、タイはEVのサプライチェーンの整備を急ぐ必要があると指摘し、バイオ燃料や川上技術などクリーンエネルギー分野の発展を並行して進めることで、グリーン産業への高度化を図るべきだと述べた。さらに、既存のICE(内燃機関)産業の強みを最大限活用しながら、グリーンモビリティへの移行を推進し、長期的なエネルギー安全保障の強化につなげる必要があるとの考えを示した。
 ボッシュの社長は、自動車産業が技術革新によって急速に変化していると述べ、特にソフトウエア、電子技術、AIの融合が進んでいることから、サプライヤー各社は迅速な対応と、重点を置く技術分野の明確化が求められていると指摘した。半導体などを含む政策支援、産業のエコシステム構築、新技術の受容などにおいて、政府の役割が極めて重要で、それが産業の競争力強化につながるとの見方を示した。
 オートリブのグローバル・サプライチェーン・マネジメント担当上級副社長は、タイの自動車産業が世界的潮流に沿って発展しており、特に国内部品メーカーの高度化が、グローバルサプライチェーンとの接続における重要な強みになっていると評価した。その一方で、タイは今後も世界の次世代自動車のサプライチェーンにおける地位を維持するため、生産ラインの技術高度化を急ぐ必要があると述べた。

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