2026年5月15日(金)号

官民連携強化へ=首相がFTIと競争力回復を協議

 5月12日午後、タイ工業連盟(FTI)のピムチャイ・リーイサラヌクン会長が執行部を率いて首相官邸にアヌティン首相兼内相を表敬訪問し、タイ経済と産業の振興に向けた官民連携強化について意見交換を行なった[=写真]。首相は、官民協力を通じて国の競争力回復を進める方針を示した。


 ラチャダー・タナディレーク政府報道官によると、首相は新たなFTI執行部との会談を歓迎するとともに、新体制は企業経営者・実業家として豊富な実務経験を持ち、産業界を真に理解している人材で構成されているとの認識を示した。そのうえで、ピムチャイ会長の指導力と官民協力のもと、タイ経済と工業部門を力強く発展させ、あらゆる規模の事業者の収益の拡大を実現するとともに、労働者の生活水準と所得の向上を具体的に推進できるとの期待を表明した。
 首相は、FTIが示した提案は、政府が進める経済・産業構造高度化政策に合致すると述べた。特に、中小企業の資金調達、テクノロジー、イノベーション、新市場へのアクセス支援に加え、クリーンエネルギーへのエネルギー構造の転換は、国の競争力強化に向けた重要なメカニズムになるとの認識を示した。政府が今後も民間部門への支援と提案の聴取を継続し、現下の経済状況に適した政策づくりを共同で進める方針を確認した。FTIから追加の提案があれば、政府として全面的に耳を傾け、共に推進していく用意があると強調し、タイ経済と産業を長期的に安定・均衡・持続可能な形で発展させたいと述べた。
 FTI側は、「The New Chapter of Thai Industry 5I」の理念に基づくタイ経済と工業の振興方針を提示した。
 1.Intelligent Industry(I1):デジタル技術とAIを活用したスマート工業への転換の推進。
 2.Innovation & Creative Industry(I2):イノベーションとクリエイティブ産業を育成し、高付加価値化を図る。
 3.International Alliance & Network(I3):国際的なビジネス協力とネットワークを拡大する。
 4.Industrial Infrastructure Reform(I4):工業の競争力向上に向けたインフラ改革を推進する。
 5.Inclusive & Sustainable Growth(I5):包摂的で持続可能で、均衡ある成長を促進する。
 具体的には「Made in Thailand(MiT)」製品の振興、中小企業が技術・イノベーション・資金・新市場へアクセスできるよう支援するための連携強化、タイの競争力向上に向けたエネルギー安全保障の推進、法制度・規制改革、インフラ投資の加速、産業廃棄物管理の高度化などを柱としている。さらに、環境配慮型生産への転換、温室効果ガス排出削減、資源利用効率の向上、低炭素経済の推進を通じ、経済・社会・環境の均衡ある発展を目指す方針を示した。
 会合には、エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相、パコン・ニラプラパン副首相、チュラパン・アモンウィワット労相に加え、工業省次官ら関係機関の幹部も同席した。
 5月13日には、ラチャダー報道官が、アヌティン首相と経済関連閣僚がFTI幹部と行なった協議について、政府と民間部門が緊密に連携し、国の競争力回復を目指す重要な出発点になったと総括した。
 首相は産業界から、生産コスト問題、中小企業の資金調達難、インフラ、物流、クリーンエネルギー、企業活動を促進する法改正、労働問題など幅広い提案を聴取した。首相は、政府の役割を「規制者」から「支援者・促進者」へ転換し、民間部門が最大限の能力を発揮できる環境整備を進める必要性を強調した。また、「官民合同委員会」の機能復活にも賛同した。FTI、タイ商業会議所(TCC)、タイ銀行協会(TBA)の経済3団体を定期協議の場へ招き、問題提起、解決策の提案、経済政策を実効的に進める。首相は、過去に東部臨海工業地帯(イースタンシーボード)開発を成功へ導いた官民連携モデルを再活用したい考えも示した。
 ラチャダー報道官はさらに、首相が資金繰り問題を抱える中小企業の現状を懸念していると説明した。一部の中小企業は不良債権(NPL)化し、インフォーマルな資金源に流出している。政府は、事業者を可能な限りフォーマルな経済システムに戻すための制度改善を検討する。同時に、競争力ある製品を生産できる中小企業への能力向上の支援も進めるとした。
 さらに、「Made in Thailand(MiT)」政策を通じた政府調達を活用し、タイ製品への発注を増やす。中小企業の収入確保、信用力の向上、銀行融資へのアクセス改善につなげたい考えを示した。
 民間部門の競争力向上を支えるインフラ整備について、首相は各種「ミッシングリンク」の解消を重視していると述べた。単なる交通インフラ建設ではなく、関連産業基盤、物流網、農産物・食品の輸出体制の整備を含むもので、タイを再び地域の生産・貿易拠点として復活させる狙いがある。
 協議において、重要議題の一つとなったのが労働問題。FTIは、労働省と民間部門が協議し、外国人労働者、特に20万人超がなお制度外にあるカンボジア人労働者について、適切な登録・管理・活用制度を構築するよう提案した。労働者は国籍ごとに技能や専門性が異なるため、産業界としては、実際の生産現場のニーズに合致した労働管理システムを求めている。労働省はこの提案を受け、民間部門と連携しながら具体化を進める。国家安全保障、労働者の保護、福利厚生、生産の継続性を含めた明確で適正な労働制度を整備し、国家間の問題が、これら外国人労働者に依存する国民や事業者に悪影響を与えないようにする。
 ラチャダー報道官は、「今回のFTIとの会談は単なる意見聴取ではなく、政府と民間が体系的に共同作業を進める仕組みづくりだ。政府はインフラ、資金、法制度、エネルギー、労働の各問題解決を進め、民間企業の競争力を高め、雇用を創出し、タイを再び地域有数のポテンシャルを持つ国へ押し上げる」と述べた。

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