仮想銀行3陣営に免許付与=SCB、クルンタイ銀、CPグループ
タイ中央銀行は6月19日、SCB・X、クルンタイ銀行、ACMホールディングの3者に対し、仮想銀行(バーチャルバンク)事業の免許を付与する方針を決定した。7月上旬にも関係者を集めた初回の会合を開き、今後の手続きを進める。
承認を受けた事業者はパブリックカンパニー(株式公開会社)として法人を設立し、中銀による事業開始前の評価を経たうえで、財務大臣の正式承認から1年以内に営業を開始しなければならない(起算日は2025年6月19日)。ただし、状況に応じて中銀は最大1年の猶予を認める可能性がある。
SCB・Xは、中国のWeBank、韓国のカカオバンクと提携。クルンタイ銀行は、通信大手アドバンスド・インフォ・サービス(AIS)、PTTオイル&リテール・ビジネス(OR)と連携する。ACMホールディングはCPグループ系で、電子ウォレット「トゥルー・マネー」の運営会社が出資しており、アリババ・グループ傘下のアント・インターナショナルと提携する。
ルン・マリカマート中銀副総裁によると、認可を受けた3社が1年以内の営業開始を目指せるよう指導を行なう方針で、7月初旬の会合では各社の準備状況を確認する。年内に開業準備が整った事業者については、前倒しでの営業開始も認める方針だ。
仮想銀行には、従来の銀行サービスではアクセスに難があった中小企業や個人の金融アクセス向上が期待されている。中銀の調査によれば、中小企業の約50%が金融アクセスに課題を抱え、制度外金融(高利貸しなど)への依存が続いている。また、家計の76%が半年分の生活費に満たない貯蓄しか持たず、緊急時の備えが不十分な状況にあるという。仮想銀行は、こうした消費者金融面でも大きな役割を果たすと見込まれている。
一方で、ルン副総裁は仮想銀行が新たなリスクを生まないよう、最初の3~5年は監督体制を特に厳格にする考えを示した。仮想銀行は、従来の銀行に比べて設備投資や人件費が抑えられるという利点があり、これを顧客サービスの向上に活かすことが求められている。経験豊富なパートナーとの連携により、こうした特性に適応できると中銀は期待している。
ルン副総裁は、「従来型の銀行にも強みはあり、仮想銀行と優劣を比較するものではない。それぞれが自らの強みを活かしていってほしい」と述べた。
承認を受けた3陣営はいずれも、それぞれ異なるビジネスの強みを持っている。カシコンリサーチセンター(Kリサーチ)は、今回承認された3陣営について、中銀が目指す金融サービスの方向性に沿った多様な強みを備えており、それぞれがタイの金融エコシステムにおける隙間を埋め、補完する役割を果たすとみている。また、これにより国内金融システムに新たなイノベーションがもたらされる可能性があるとも分析している。
これらの陣営は、中小企業や個人顧客への金融サービスに強みを持ち、AIを活用したデータ分析モデルの開発により、グループ企業の顧客や一般利用者に適した金融商品を提供できる能力がある。特に、無担保・有担保を含む個人向け融資やデジタル貸付の分野において、競争力を発揮できそう。
技術面では海外の有力プレーヤーと連携しつつ、国内の大規模な顧客基盤を有する企業とのパートナーシップを通じて、膨大な顧客データの活用が可能となる。さらに、オルタナティブデータや各種プラットフォーム上の取引データをひとつのエコシステムに統合することで、より高度で的確な金融モデルやサービスの開発が期待される。
いずれの陣営も、多様な貯蓄・投資商品を提供でき、利用者の行動、ニーズ、所得状況に応じた柔軟な商品設計が可能と考えられている。
金融当局が重視しているのは、十分な金融サービスを受けていない層や、まったくアクセスできていない層に対する金融サービスの提供を促進すること。特に、一般個人、中小企業といったセグメントを対象とし、ニーズに即した革新的な金融商品を開発・提供する姿勢を求めている。このような方向性は、国際的にも見られるトレンドで、金融包摂を重視する政策の一環として、仮想銀行が果たすべき役割が明確に定義されている。従来の銀行ではカバーしきれなかった層に対し、より柔軟でアクセスしやすいサービスを届けることが仮想銀行に期待されている。テクノロジーの活用によるコスト削減や、代替データを活用した与信判断モデルなども期待している。
また、海外の事例からも確認されるように、仮想銀行が事業を開始したばかりの段階では、中央銀行による厳格な監督・管理のもとで運営されることが多く、その期間中の金融サービスにおける競争は、主に顧客のニーズに応じた金融商品のイノベーションと多様性の創出に重点が置かれる傾向がある。
このような環境下、仮想銀行は既存の金融機関とは異なるアプローチで、従来の枠を超えた新しいサービスや商品モデルを打ち出し、ユーザーの利便性や利用体験の向上に注力しなければならない。特に、個々人にカスタマイズされたサービス、デジタル技術による即時対応、低コスト構造による小口融資、柔軟な資産運用ツールの提供といった分野での差別化が鍵となる。
SCB・Xのパートナーのカカオバンクは、メッセージアプリ「Kakao Talk」と金融サービスを連携させることで、個人向け金融取引、たとえば送金、支払い、集金といったサービスの利便性を高めている。預金口座商品についても多様な選択肢を提供しており、たとえば毎日利息が付く貯蓄口座、特定の目的で仲間と共同で貯蓄する「グループ預金」、クレジットカードの利用実績に応じて利息が上乗せされる預金などがある。融資商品に関しても、個人のニーズに特化した商品を展開しており、少額から利用可能な融資、返済日を柔軟に設定できる仕組み、日割りで利息を計算する機能、書類不要のローン審査、借り手の希望に合わせた返済方式など、多様な選択肢を用意している。
クルンタイ銀行のパートナーであるAISのソムチャイ・ルートスティウォンCEOは、クルンタイ銀の持つ金融基盤と、AISが保有する約5000万人のユーザーベース、PTTグループの販売ネットワークを組み合わせることで、仮想銀行が国民に対して効果的な金融サービスを提供できるとの自信を示している。
首相が陸軍慰問=「敵対者」発言の火消しに奔走
ペートンターン首相は6月20日、ウボンラチャタニ県のカンボジア国境を訪問し、現地で警備にあたる陸軍兵士を慰問した[=写真]。カンボジアとの緊張が続く中、国家と国民を守るために尽力する軍の犠牲と揺るぎない献身を称賛し、政府として全面的な支援を約束した。

首相による同県ナムユアン郡のモラコット作戦基地訪問に同行したのは、首相とフンセン氏との会話の中で「敵対者」と言及された第2軍管区のブンシン・パートクラーン管区司令官。すでに首相とは電話でのやり取りで、謝罪と発言の意図について説明を受けていたが、この日も改めて現地で謝罪を受け、「全く問題はない」として理解を示す姿勢を見せた。
ブンシン中将はカンボジアの国境をめぐる態度に批判的で、「軍事的侵略があれば即座に対応する」といった発言がフン・セン上院議長らの不興を買っていた。首相は問題の通話の中で、フン・セン氏に対し「彼らは反対の立場にいる人たちだから、発言は気にしないでほしい」などと述べていた。
ペートンターン首相は、プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼国防相や、陸軍参謀長のトーンチャイ・ロートヨイ大将、ブンシン中将を含む軍幹部とともにスラナリー部隊の兵士たちに士気を高める言葉をかけた。首相は「すべてのタイ人は、共にこの土地を守らなければならない。兵士は第一線の防衛者であり、政府は彼らが心身ともに強くあることを必要としている。政府は、軍が必要とするあらゆる支援を提供する用意がある」と語った。
その他のニュース
タイ米貿易交渉=政情不安でも継続
首相が陸軍慰問=「敵対者」発言の火消しに奔走
ペートンターン首相弾劾請求=上院議長が首相の資質を問題視
首相辞任求める抗議全国に拡大=音声流出めぐり反発強まる
都市鉄道の運賃統一へ=政府が事業権買戻し検討
バンコク中央駅周辺を再開発=SRTが本社ビルなど建設
EECが上海で投資誘致=中国企業に優遇策紹介
健康産業の成長促進=インパクトでハーブ展
[社会ニュース]
政務秘書官がフン・セン氏告訴=「首相は被害者」
中東情勢緊迫で外相が退避勧告=イラン、イスラエル在留国民
エルメス11点を香港で強奪=逃亡の男をタイで逮捕
県別高齢者人口=統計局がランキングを発表
[タイ温泉紀行]
第9回 ホームプートゥーイ
[閣議決定]
2025年6月17日
[先週の為替・株式市況]
25年6月16~6月20日
[商品市場]
バンコク首都圏の燃油小売価格
天然ゴム・ハジャイ中央市場
[金融市場]
外為相場
コメント