5000億バーツ緊急借入へ=公的債務上限も引き上げ
アヌティン政府が5000億バーツの借入権限を財務省に付与する緊急勅令の制定を準備している。エネルギー危機とスーパー・エルニーニョへの対応のため緊急に財政資金が必要と判断しており、首相は債務上限を75%へ引き上げる可能性を否定していない。上限引き上げで9500億バーツの借入余地が追加で生じる見通しで、現在の借入余地7600億バーツと合わせて合計1兆7000億バーツとなる。
2月28日から続く中東戦争の影響により、世界のエネルギー価格が上昇し、2026年のタイの経済とインフレ率に影響を与えることは避けられない。政府はエネルギー危機に対応するため、財務省に借入権限を付与する緊急勅令の発出を検討しており、借入は過去140年で最も深刻になるとの見方があるスーパー・エルニーニョへの対応にも充てられるもよう。
気象局は、6~8月にタイがエルニーニョ状態に入る可能性を62%と見込み、その状態は2026年末まで続くと予測している。また、水資源情報研究所は、2026年の降雨量が2012年に近い1479㍉と予測しており、過去30年平均を下回る。
パコン・ニラプラパン副首相[=写真]は、政府がエネルギー価格の危機とスーパー・エルニーニョという「複合危機」に備えるため、5000億バーツ借入の緊急勅令を検討していると明らかにした。憲法第172条に基づき、国の安全や経済危機により緊急かつ必要な場合には制定できると定められている。発出と同時に効力を持つが、可能な限り速やかに下院へ提出し、審議を受けなければならない。

パコン副首相は、状況は緊急かつ差し迫っていると説明した。国庫資金が逼迫するなか、戦争やスーパー・エルニーニョといった予測困難な外的リスクに直面し、農業生産や経済全体に広範な影響を及ぼす可能性があるため、政府は緊急対応に備えた予算を確保する必要があるとした。
政府は危機対応の財源確保のため、予算振替法案の制定も並行して進める方針。なお、借入のための緊急勅令の制定は、公的債務上限の引き上げが前提となる。現在の上限はGDP比70%で、今年2月末時点の公的債務残高はGDP比66%となっている。財務省は、財政余力(フィスカル・スペース)が限られつつあるなかで、引き上げ幅を取りまとめる予定。
2月時点のタイのGDPは約19.05兆バーツ。現行の債務上限70%で、7600億バーツの借入余地が残っている。上限を75%まで引き上げた場合、さらに9500億バーツの借入が可能となり、合計で1兆7100億バーツの借入余地となる。
アヌティン首相は、記者団から公的債務上限を70%から75%へ引き上げるのかと問われ、うなずいた。パラドーン・プリサナナンタクン首相府相(予算局監督担当)は、財務省に借入権限を付与する緊急勅令については必要性の検討が必要で、現時点ではまだ閣議で議論していないと述べた。ただし実施可能な選択肢の一つで、まず経済閣僚会議で協議したうえで閣議に提出するとした。現在、毎週月曜日に開催する経済閣僚会議の設置を進めている。
一方、予算振替法の進展については、2027年度予算案が閣議に提出された後に進める必要があり、6月頃になる見通しと説明した。現在、国庫資金は700億バーツの欠損があるため、予算振替法の制定ではまずこの債務の返済に充てる必要がある。生活費支援の「コンラクルン」は、初期段階で使用可能な予備費が2000億バーツあり、1000万人以上の国民を支援できる見込みで、5月にも実施されるもよう。
エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相は、ワシントンDCで開催された世銀・IMF春季会合の際、フィッチ、S&P、ムーディーズの3大信用格付会社の幹部と協議したことを明らかにしている。タイ経済が高い安定性を維持し、外部の変動にも耐え得る構造にあると伝えた。公的債務の99%が国内債務であるため、世界的な金融変動によるリスクは非常に低いと説明した。
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