2025年6月26日(木)号

政策金利は1.75%据え置き=成長鈍化を警戒も、緩和余地を温存

 タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は6月25日、今年3回目の政策決定会合を開き、6対1の多数決で、政策金利を年1.75%に据え置くと決定した。1人の委員は政策金利を0.25ポイント引き下げ、1.75%から1.50%にすることを支持した。
 MPCの書記を務めるサッカポップ・パンヤーヌクン総裁補[=写真]によれば、今年前半のタイ経済は、製造業の生産と輸出の加速により、予想を上回る成長を遂げた。ただし、今後は、成長が減速する見通しにある。米国の関税政策により輸出が影響を受けるリスクに加え、地政学的リスクや国内要因からの追加的なリスクも懸念されている。


 一般インフレ率は供給サイドの要因により低水準で推移する見通しにある一方、貸出は一部のグループで資金需要の減少や信用リスクの上昇などにより、減速する傾向にある。
 サッカポップ氏によれば、MPCは、今後の経済を支援するためにも、金融政策は緩和的な水準にあるべきと考えている。過去2回の会合での金利引き下げは、一定程度のリスクに対応できる効果をもたらしている。ただし、今回の会合では、大多数の委員が政策金利を据え置くべきと判断した。不確実性が高く、金融政策の余地(ポリシースペース)が限られる環境下で、金融政策のタイミングと有効性を重視した結果だと説明した。
 一方、1人の委員は政策金利を年0.25%引き下げるべきと主張した。金利負担を軽減し、経済が弱含む中で影響を受けているグループの適応を促すことを利下げの理由に挙げている。
 タイ経済は、2025年と2026年にそれぞれ2.3%、1.7%の成長が見込まれている。今年第1四半期の実体経済のデータと第2四半期の経済指標が、想定を上回る拡大傾向を示していることを根拠に、2.3%という相対的に高めの成長率を見込んでいる。特に、電子機器関連品目の輸出が大きく伸び、米国向け輸出が加速したことが製造業と関連サービス業に好影響をもたらしている。
 しかし、年後半以降、経済成長のペースは減速する。特に、米国の関税政策による輸出への影響が拡大する見通し。民間消費は、所得と消費者信頼感の低下傾向により成長が鈍化する。
 外国人観光客数は減少傾向にあるが、1人あたり支出額は伸びており、観光収入全体はなお拡大する可能性があるとみている。
 一方、一部の事業は輸入品との競争や消費者の消費行動の変化によって引き続き圧力を受けている。
 2025年と2026年の一般インフレ率は、それぞれ0.5%、0.8%の低水準にとどまる見込みで、主にエネルギーと生鮮食品部門が影響を及ぼす要因となっている。一方、コアインフレ率については、2025年が1.0%、2026年が0.9%と予測した。サッカポップ氏は、一般インフレ率が低水準で安定している主な理由は供給サイドの要因によるもので、物価の広範な下落(デフレ状態)を引き起こしているわけではないと強調した。また、中期的なインフレ期待が依然として政策目標の範囲内にとどまっていることを指摘した。今後については、エネルギー価格に影響を与える可能性がある地政学的リスクによる上振れに注視する必要があると述べた。
 貸出残高は全体として収縮しており、金融機関は引き続き貸出に慎重姿勢を取っている。特に、中小企業と低所得層の家計向け貸付で慎重さがみられる。貸出の減少は、企業の資金需要の減少と債務返済の増加が重なっているためだと説明した。債権の質も悪化しており、特に中小企業向け融資と住宅ローンで顕著になっている。
 金融市場と金融機関の金利水準は、これまでの政策金利の引き下げに連動して低下している。
 バーツの対ドルレートは、外部要因の影響によりわずかにバーツ高となったが、域内通貨と同様の動きを示している。
 MPCは、貸出の状況と債権の質の動向を注視する必要があると認識している。これらは経済活動に影響を与える可能性があるとした。
 金融政策運営の枠組みは、物価の安定を維持しつつ、経済の持続的な成長と金融システムの安定を図ることを目標としており、経済とインフレの動向やリスクに応じて、適切に金融政策を調整する用意があると述べた。

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