スタグフレーション懸念強まる=JSCCIBは成長率下方修正
中東における長期化する紛争は、世界経済が減速し、雇用が減少する一方でインフレが高止まりするスタグフレーションに陥るリスクとなっている。国債利回りの上昇、米ドル高、金価格やリスク資産の下落といった動きに表れている。商業、工業、銀行の経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)は4月1日に開いた月例会見で、主なリスクは、原油、天然ガス、原材料といったコモディティの供給不足だと指摘。世界の生産活動の停滞を招き、サプライチェーン全体を通じて最終消費者にまで影響が波及する可能性があるとして警戒感を強めている。

タイ経済はエネルギー価格の急騰による影響を受けており、2026年の平均インフレ率は、従来予想の0.2~0.7%から2.0~3.0%へと上昇する見通し。市場メカニズムに基づく燃油小売価格の上昇による。加えて、生活費の上昇が消費や民間部門の信頼感に与える影響にも注意が必要だ。政府は景気下支えのため追加借入を余儀なくされる可能性があり、企業は競争力の維持のため原価管理を迫られる。
物流の混乱により輸出は影響を受ける。また、向こう3か月で外国人観光客は約100万人減少すると見込まれている。これらを踏まえ、JSCCIBは今年のタイの経済成長率を従来予想の1.6~2.0%から1.2~1.6%へと下方修正した。紛争が拡大すれば原油価格はさらに上昇する可能性があり、引き続き状況を注視する必要がある。
今回の会合では、PTT社のコンクラパン・イントラジェーンCEOがエネルギー情勢について説明した。同氏は、国のエネルギー安全保障の確保が最優先課題だと指摘。サプライチェーン全体の情報を透明性をもって提示し、原油調達の多様化により中東依存を低減する必要性を指摘した。さらに、製油所の処理能力を高めて多様な原油に対応し、稼働率を100%以上に引き上げるとともに、通常比7%の軽油の増産を進める。また、備蓄の適正管理と物流網の活用により供給を確保し、全国2409か所のPTTステーションを通じて安定供給を継続する方針を示した。
JSCCIBは長期化が見込まれるエネルギー危機に強い懸念を抱いている。生産コスト、輸送コスト、国民の生活費に継続的な圧力を与えているためで、このため、「Connect the dots」の考え方のもと、関連情報を統合し、適切な計画を策定するとともに、状況について透明性をもって公表し、すべての関係者が共通認識を持てるようにしなければならないと指摘した。
こうした影響を踏まえ、JSCCIBは政府に対し、中小企業や脆弱層といった特定の対象に焦点を当てた対策(ターゲット型政策)を速やかに実施するよう求めた。また、石油の買い占めや便乗値上げを防止するための監督強化に加え、輸送コストの軽減策を講じることで、事業者が商品価格を維持できるよう支援するよう求めた。これらの措置は、生産コスト負担の軽減や企業の流動性確保に寄与する。ただし、財政余力や将来の政府投資の能力、さらには国の信用格付けへの影響にも配慮する必要があると付け加えた。
タイは今回の危機を経済構造改革の契機と捉え、競争力を強化し、外的ショックに耐える「緩衝力(バッファ)」を高め、持続的なレジリエンス(強靭性)を構築すべきだと提言した。特にエネルギー安全保障とコスト削減の分野においては、「Reinvent Thailand」の方向性と整合する取り組みが求められるとした。
さらに、この日の会合では、エネルギー省が策定を進める新たな電源開発計画(PDP2026)についても議論した。同計画は単なるエネルギー計画にとどまらず、国の競争力を高めるための中核的な戦略として位置付けるべきで、エネルギートランジションを具体的に推進していく必要があるとした。
2026~2030年の電力料金構造については、現実のコストを反映した形で早急に公表するよう提案した。また、電力事業の自由化を進め、公平な送電網へのアクセスを確保するとともに、温室効果ガス削減目標(NDC3.0)と連動させることで、投資家の信頼を高め、投資誘致を促進するよう提言した。
再生可能エネルギーの体系的な導入促進、クリーンエネルギー基準の高度化、企業や中小企業の適応を支援するための金融ツールの整備も必要と指摘した。これらの取り組みは、官民連携によるエネルギー分野の合同委員会の設置を通じて推進し、戦略的に課題を解決しながら、PDP2026がエネルギーの安定供給、持続可能性、長期的な競争力のすべてを満たす計画となることが求められるとした。
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