2026年7月7日(火)号

「投資年」掲げ成長戦略加速=財政健全性維持との両立目指す

 アヌティン政府は2026年を「投資年」と位置付け、2027年度予算で投資支出の割合が縮小するなかでも、予算外資金や官民連携(PPP)、国営企業投資、外国直接投資(FDI)など多様な資金調達手段を活用しながら成長投資を加速する方針を打ち出した。一方、財務省は政府債務や利払い負担は引き続き管理可能な水準にあると説明し、積極的な投資と財政規律の両立に自信を示している。
◆予算外資金も活用し「投資年」推進
 エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相は7月4日、タイ・ナショナル・プレス・カウンシル創立29周年記念式典で「世界的危機の中でタイ経済が直面する主要課題」をテーマに講演し、2027年度予算で投資予算が減少したことは国全体の投資縮小を意味するものではないと強調した[=写真]。


 同相は、今後は予算外資金や官民連携(PPP)、国営企業投資、外国直接投資(FDI)の活用を拡大し、財政負担を抑えながらインフラ整備を進める方針を示した。
 政府は国営企業による2700億バーツの投資を経済システムへ投入するほか、タイ未来基金やPPP事業の活用を拡大し、大規模インフラ事業の財源を確保する計画だ。
 投資委員会(BOI)の委員長も務めるエークニティ副首相兼財務相は、「タイランド・ファストパス」制度を通じ、9000億~1兆バーツのFDI実現を目標に掲げた。同制度では、BOIの投資奨励を受けた企業に対し、今年中に承認済み投資額の20%以上を実際に投資することを求め、計画案件の早期実行を促す。同時に、技術移転を進めながら新産業で必要な技能をタイ人労働者へ習得させる「スキル・ブリッジ」制度も推進する。
 同相は、2027年度予算で投資支出比率が低下した背景について、これまで他の予算項目に含まれていた経常支出を切り分け、財政の透明性を高めたことが主な要因だと説明した。「投資予算は小さく見えるかもしれないが、それはタイの投資が減ることを意味しない。政府は利用できるあらゆる資金調達手段を活用し、投資主導の成長を維持する」と述べた。
 さらに、憲法裁判所が7月10日に判断を示す予定の4000億バーツ借入緊急勅令についても、短期的な景気対策と長期的な構造改革の双方に不可欠だとして理解を求めた。
 借入金は、①生活費負担の軽減、②クリーンエネルギーへの転換、③人的資本への投資――の3分野で重点に活用する計画で、同相は石油・天然ガス輸入への依存度が高いタイでは、エネルギートランジションが喫緊の課題になっていると指摘した。
◆公共投資総額は1.12兆バーツを確保
 政府は、2027年度の公共投資総額が前年度を上回る1兆1200億バーツとなる見通しを示し、公共投資を削減しているとの見方を否定している。
 ラチャダー・タナディレーク政府報道官によると、2027年度予算法案の投資予算は7890億バーツで、2026年度から725億バーツ(8.4%)減少する。一方で、国営企業投資2860億バーツ、PPP事業406億バーツ、タイ未来基金100億バーツなど予算外投資を組み合わせることで、公共投資総額は約1兆1200億バーツとなり、2026年度の約1兆1100億バーツをやや上回る見込みだという。
 総額3兆7880億バーツの2027年度予算法案は前年度比0.2%増となり、すでに国会下院で第1読会を通過した。ラチャダー報道官は、政府は予算規模や投資支出、財政赤字に対する国会や国民の懸念を認識しているとした上で、財政制約を踏まえながら重点分野へ予算を配分したと説明した。
 国民支援、経済の安定、財政規律、将来への投資の均衡を重視して編成しており、すべての予算について、個別課題の解決や長期的な成長力強化への効果を検証したうえで配分した。
 2027年度の財政赤字は7880億バーツを見込み、2026年度の8600億バーツから縮小する。GDP比では4.4%から3.9%へ低下する見通しだ。
 また、アヌティン政権の「10プラス」政策には総額1兆2320億バーツを配分し、低所得世帯、高齢者、地域社会、教育、中小企業(SME)、貿易、グリーン経済、AI、将来志向型投資を重点分野と位置付ける。
 さらに、福祉、教育、公衆衛生には6390億バーツを配分し、前年度より432億バーツ増額する。
◆政府債務は管理可能水準を維持
 財務省公的債務管理局(PDMO)は、政府債務は増加しているものの、利払い負担や債務残高はいずれも管理可能な水準にあり、今後4年間も財政規律の範囲内で推移するとの見通しを示した。
 PDMOのチンダーラット・ウィリヤタウィクン事務局長[=写真]によれば、政府債務の利払い費は政府歳入見込み額の10.2%に相当し、格付会社が投機的格付け(ジャンク債)の目安としている12%を下回っている。
 格付会社は国営企業の利払いを除外して評価するため、実際に格付けで用いられる政府利払い費の歳入比率は6~7%程度にとどまっているという。
 4月時点の政府債務残高はGDP比66.7%で、財政規律が定める上限70%を下回った。PDMOは借入コストや債務リスクを慎重に管理しており、今後4年間も政府債務残高はGDP比70%未満を維持できるとの見通しを示している。
 タイの政府債務は新型コロナ禍で大幅に増加した。政府は家計や企業への支援策として合計で1兆5000億バーツの緊急借入勅令を2回発令した。その結果、政府債務残高は2019年4月の6兆8800億バーツ(GDP比41.2%)から、2026年4月には12兆8000億バーツ(同66.7%)まで増加した。利払い費の歳入比率も2023年の8.31%から2024年は9.59%、2025年9月には10.2%へ上昇した。
 PDMOは平均調達金利を比較的低水準に維持しており、2023年は2.67%、2024年は2.85%、2025年は2.77%だった。政府債務の80%超が固定金利で構成されているため、金利変動リスクも抑えられている。
 2026年度は総額2兆6000億バーツの債務管理を計画しており、このうち約1兆3000億バーツは国債や個人向け国債、グリーンボンドなど長期資金で調達する予定だ。残りは約束手形や借入契約、財務省短期証券などを活用して資金を確保するとしている。

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