2026年7月9日(木)号

工業信頼感指数、4か月ぶり改善=「タイチュアイタイ・プラス」、エネルギー価格下落が追い風

 タイ工業連盟(FTI)が発表した6月の工業信頼感指数は88.2となり、前月の84.7から上昇し、4か月ぶりに改善した。政府の「タイチュアイタイ・プラス」による消費喚起やエネルギー価格の下落、ハイテク製品の輸出拡大などが追い風となった。一方で、貿易障壁や米国の関税措置を巡る不透明感など、先行きにはなお懸念材料が残るとしている。
 指数上昇の背景には、複数の好材料がある。「タイチュアイタイ・プラス」が国民の生活費負担を軽減した。430億バーツ超の資金が経済を循環し、国内消費の回復を後押しした。
 また、企業による年央セールや「アメージング・タイランド・グランドセール2026」も、日用品、食品・飲料、ファッション、ライフスタイル商品の販売を押し上げ、観光客の消費拡大にも寄与した。
 米国とイランが一時停戦で合意し、ホルムズ海峡周辺の緊張が緩和した。停戦合意を受け、世界の原油価格や国内の軽油価格が下落し、製造業のエネルギーコストや輸送費の負担が軽減され、石油化学・肥料産業で原材料不足への懸念も和らいだ。
 さらに、「タイランド・ファストパス」プロジェクトでは、総額2230億バーツに上る25件の投資案件が迅速に進められており、将来的には7000億バーツを超える投資につながると期待されている。投資家心理が改善し、関連産業のサプライチェーンでも需要が喚起されている。
 貿易面では、ハイテク製品の輸出が引き続き拡大している。2026年最初の5か月間のハイテク製品の輸出額は、世界的な需要増を背景に前年同期比37.6%増加した。
 一方、金融政策委員会(MPC)は政策金利を年1.00%に据え置いた。資金調達コストの上昇圧力が和らぎ、依然として脆弱な景気回復を下支えすると期待される。
 信頼感指数は改善したものの、引き続き注視すべきリスク要因も残る。6月には、調味料やココナツ製品などを含む価格統制対象品目が66品目に拡充され、特に食品分野では、企業がコスト上昇分を販売価格へ転嫁することが難しくなりそう。
 マレーシア、メキシコ、ベトナムなど貿易相手国による貿易障壁も、これら市場向けのタイ製品の輸出に引き続き影響を及ぼしている。
 一部の製造業は依然として厳しい状況が続いている。鉄鋼、繊維、衣料品などで受注が減少し、設備稼働率も低下している。自動車産業では、ピックアップトラック市場が購買力の低迷とローン審査の厳格化による圧力を受けている。1~5月のピックアップトラックの販売台数は前年同期比5.13%減となり、海外市場向け需要も同12.31%減少した。自動車部品産業のサプライチェーン全体にも影響が及んでいる。
 FTIが6月に実施した48業種・1328社を対象とする調査によると、企業の懸念が和らいだ要因として、世界経済(71.9%→61.6%)、エネルギー価格(75.5%→59.0%)、国内経済(75.7%→55.6%)、資金アクセス(34.3%→31.7%)、為替相場(特に輸出企業の観点、41.0%→29.9%)、政府の政策(37.8%→28.8%)、貸出金利(32.9%→25.8%)が挙がった。
 一方、向こう3か月の信頼感指数の見通しは94.5となり、2026年5月の91.8から上昇した。
 プラス要因としては、「家庭向け太陽光発電」政策や総額2000億バーツ規模のエネルギー構造改革計画により、太陽光パネル、電気設備、蓄電システムなどクリーンエネルギー産業のサプライチェーンで需要拡大が見込まれ、関連する製造業にも好影響をもたらすと期待されている。
 ただし、引き続き注視すべきリスク要因もある。特に、米国の通商法301条に基づく関税措置を巡る不透明感が挙げられる。同措置では現在、労働問題(Labor Force)や過剰生産能力(Overcapacity)が審査対象となっており、タイは審査対象16か国の一つに含まれている。関税措置によって輸出コストが上昇し、タイ企業の競争力に影響を及ぼす可能性がある。
 さらに、インフレ圧力を背景に主要国で政策金利の引き上げが進む可能性についても懸念があり、今後の貿易や投資、世界経済の回復に影響を及ぼすおそれがある。
 こうした状況を踏まえ、FTIは6月の企業アンケート結果に、国際経営開発研究所による各国の競争力評価の分析結果を加え、タイの競争力強化に向けた提言を取りまとめた。
◆2026年6月の政府向け提言
 電力料金体系、国際競争力、低炭素社会への移行という3つの目標のバランスを踏まえた明確なエネルギー政策を示し、総額2000億バーツの借入事業を最大限活用する。また、小型モジュール炉(SMR)や水素など代替エネルギーの導入についても早急に検討を進め、タイのエネルギー転換につなげる。
 ダンピングのおそれがあるリスク品目について、輸入量や異常な価格動向を監視する早期警戒システムを速やかに整える。民間企業が貿易救済措置の発動を申請する際に必要なデータを迅速、効率的に提供できる体制を構築する。
 タイ製品の消費を促す全国キャンペーンを実施し、民間企業による国産品「Made in Thailand(MiT)」の利用を後押しする措置を講じる。タイ製品の購入費用を1.5倍の損金算入対象とする税制措置や、投資奨励措置としての税制優遇を導入し、タイ企業の事業機会拡大を支援する。
◆タイの競争力強化に向けた政府への提言
 1.経済パフォーマンス(Economic Performance)
 短期的な景気刺激策から、経済構造の長期的な転換(Economic Transformation)へ政策の軸足を移す。構造的課題の解決や地方への成長の波及、新たな経済成長エンジンの創出につながる戦略的投資を進める。具体的には、次世代自動車、スマートエレクトロニクス、次世代食品産業などを重点分野とする。
 2.政府の効率性(Government Efficiency)
 デジタル政府の整備を進め、共通プラットフォームを活用したワンストップ許認可制度を構築する。企業の負担となっている規制の見直し・削減も進め、「B-READY」を指標として活用しながら、コスト削減、手続き期間の短縮、透明性の向上を図る。
 3.企業の効率性(Business Efficiency)
 タイ企業の生産性を高めるため、テクノロジー、自動化、AI、高効率設備への投資を支援する。製品・サービスの高付加価値化を進め、世界のサプライチェーンとの連携を強化し、国内での技術移転を促す仕組みも整備する。
 4.インフラ(Infrastructure)
 教育制度を改革し、産業界のニーズに合った人材育成(Skills Alignment)を進める。エネルギー、物流、テクノロジー・イノベーション、デジタル・AI基盤、社会保障、環境保全などのインフラ整備については、長期的で体系的な計画を策定し、計画的に整備を進める。

医療・ウェルネス展示会開幕=イノベーション拠点化を推進

 7月8日、アヌティン首相兼内相は、シリキット国際会議場で開催される「タイランド・メディカル&ウェルネス・エキスポ2026」の開会式に出席した[=写真]。同展示会は「インターナショナル・ヘルスケア・ウィーク2026」の一環として開催され、官民の関係者、研究者、企業、投資家、医療専門家らが各国から参加した。


 ラチャダー・タナディレーク政府報道官によると、首相は、「健康はもはや疾病の治療だけの問題ではなく、世界の経済価値や雇用、投資を生み出す重要な産業の一つになっている」と述べた。タイ政府は国民の生活の質向上と経済機会の創出に向け、公衆衛生体制の整備とイノベーションの推進を一体的に進めていると強調した。
 政府はデジタルインフラへの投資、投資促進に向けた規制改革、将来の医療産業の育成を重視していると説明した。医療向けAI、バイオテクノロジー、デジタルヘルスサービス、医療機器製造、ウェルネス産業などを重点的に支援し、タイの国際競争力の向上と地域の医療投資ハブを目指す考えを示した。
 首相は、タイには質の高い医療人材、国際的に評価されている医療サービス、医療観光分野での高いポテンシャルという強みがあると指摘した。これらを先端技術や各国との協力と組み合わせることで、タイ企業や研究者、医療従事者、若い世代に新たな機会を創出し、長期的な雇用と所得の拡大につなげると語った。
 「インターナショナル・ヘルスケア・ウィーク」は、世界各国の企業、投資家、研究者、医療サービス提供者を結びつける場となり、研究開発、投資、イノベーション分野での協力拡大を後押しするほか、タイを地域の医療・医療イノベーション拠点へと発展させる重要な契機になると述べた。
 首相は、政府が信頼できるパートナーとして各国との協力を進め、医療イノベーションの発展、経済成長、国民生活の質の向上に向けた取り組みを継続していく考えを表明した。
 展示会は7月10日まで開催される。入場は無料で、医療、ヘルスケア、ウェルネス、美容分野の企業200社以上が参加。最新技術や製品、サービスを紹介するほか、特別販売、健康診断、医師や専門家による講演、健康に関する各種セミナーなどを実施する。国民が質の高い医療サービスやイノベーションに触れる機会を提供するとともに、タイを持続可能なメディカル&ウェルネス・ハブへ発展させるための重要なビジネス交流の場となる。

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