2026年6月18日(木)号

工業信頼感指数、3か月連続で低下=エネルギー高や輸入増が重荷

 タイ工業連盟(FTI)が発表した5月の工業信頼感指数は84.7と前月から低下し、先行き見通しも悪化した。エネルギー価格の高止まりや原材料コストの上昇、中東情勢を巡る不透明感が企業心理を圧迫している。一方で、電子産業やデータセンター関連投資の拡大、政府の景気刺激策は下支え要因となっており、企業の間ではコスト上昇への警戒と今後の需要回復への期待が交錯している。
 ピムチャイ・リーイサラヌクン会長[=写真]は6月17日、5月の工業信頼感指数が84.7となり、前月の85.3から低下したと発表した。指数低下の背景には、生産活動の鈍化が続いていることがある。特に輸出の拡大や外国人直接投資(FDI)増加の恩恵を十分に受けていない業種で影響が大きい。一方、海外からの製品輸入は増加傾向にあり、化粧品や宝飾品、家具などの消費財の流入が目立っている。


 企業を取り巻く環境は厳しさを増している。生産コストの上昇がインフレ圧力を高め、消費者の購買力を圧迫しているほか、企業収益にも影響を及ぼしている。建設業や農業、製造業では人手不足が続いており、生産能力の低下や生産工程の遅延を招いている。
 さらに、中東情勢の緊迫化も懸念材料となっている。ホルムズ海峡を巡る緊張の高まりはエネルギー供給網に影響を与える可能性があり、ナフサや化学肥料など重要原材料の不足につながる恐れがある。プラスチック、包装材、石油化学、農産加工など幅広い産業への波及が懸念されているほか、高止まりするエネルギー価格は輸送コストの上昇を通じて企業活動への負担を強めている。
 一方で、工業部門には明るい材料もある。デジタル技術やAIの普及を背景に電子機器需要が拡大しており、電子部品やプリント基板(PCB)、半導体の輸出増につながっている。電子産業やデータセンター向け投資も拡大が続く。PCBや電子部品など関連サプライチェーンで需要が高まっており、製造業の一部では生産活動を支える要因となっている。
 政府の支援策も下支え材料だ。政府は建設資材価格の上昇による影響を軽減するため、公共事業請負業者向けの工事費補償金(K値)の算定基準を一時的に緩和した。また、住宅ローンの担保価値比率(LTV)規制の緩和措置延長も決定しており、不動産市場の回復や建設資材需要の拡大につながるとの期待が出ている。
 FTIが48業種、1,347社を対象に実施した調査によると、企業が懸念を強めた要因は、国内経済(74.2%→75.7%)と資金調達の難しさ(32.6%→34.3%)。
 一方で、懸念が和らいだ要因は、エネルギー価格(84.6%→75.5%)、世界経済(80.6%→75.7%)、為替相場(46.5%→41.0%)、政府の政策(39.4%→37.8%)、貸出金利(34.1%→32.9%)。
 向こう3か月先の工業信頼感指数見通しは91.8となり、前月の92.8から低下した。先行きについてFTIは、中東地域を巡る地政学リスクへの警戒感を強めている。特にイランと米国の協議が打ち切られたことで、エネルギー供給網や石油化学産業、化学肥料産業の安定性に対する不透明感が高まっている。
 生産コストの上昇が商品やサービス価格へ徐々に転嫁されることで、インフレ率が3~4%程度まで上昇する可能性もあるとみている。
 もっとも、今後の景気を支える材料もある。政府は4000億バーツ規模の借入緊急勅令に基づく景気刺激策を進めており、「タイチュアイタイ・プラス」事業と国家福祉カード向け給付に2000億バーツ、エネルギー構造改革に2000億バーツを充てる計画だ。
 FTIは、これらの措置によってGDP成長率が0.6~0.8ポイント押し上げられ、経済活動や製造業の下支えにつながると期待している。
*政府への提言
 FTIは政府に対し、エネルギー価格高騰への対応として、運輸部門を対象とした燃料補助措置の延長を検討するよう求めた。生産コストの軽減に加え、インフレ率や生活費の上昇抑制にもつながるとしている。
 また、中小企業(SME)の資金調達環境改善に向け、PromptBIZプロジェクトを活用したサプライチェーン・ファイナンスの拡充を提言した。あわせて、大企業による「兄が弟を支援する」プロジェクトへの参加を促す優遇措置を導入し、サプライチェーン内のSMEが融資を受けやすい環境整備を求めた。
 さらに、長期的なエネルギー安全保障強化策として、小型モジュール炉(SMR)の導入可能性に関する検討を急ぐよう提案した。代替エネルギー源の多様化を通じて、温室効果ガス排出削減という国家目標の達成にも寄与するとしている。

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