2026年6月23日(火)号

官民合同委が初会合=成長率3%超へ改革加速

 エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相[=写真]は、官民合同委員会の機能を抜本的に見直し、従来の意見交換の場から官民が共同で経済政策を実行する組織へ転換する方針を明らかにした。経済成長率を3%超へ引き上げるほか、投資支出の比率をGDP比30%近くまで高め、4年以内に競争力を世界上位20か国・地域の水準へ引き上げることを目指す。12年以内の高所得国入りも視野に入れ、官民一体で構造改革と投資拡大を進める考えだ。


 エークニティ副首相兼財務相は6月22日の初会合後の会見で、官民合同委員会の役割を強化し、これまでの「提案を聞く場」から、官民が共同で経済を動かす「実行メカニズム」へ転換させると発表した。民間部門からの提案を会議の議論にとどめるのではなく、実際の行動へ移し、課題解決や国民、企業が実感できる成果につなげる。そのため、すべての案件について目標、責任機関、評価指標、実施期限を明確に定める。
 世界経済が構造的な転換期を迎えるなか、タイにとって重要なのは単に経済成長率を引き上げることではなく、何を成長の原動力とし、それをどのように実現するかだと強調。官民合同委がタイ経済の潜在力を引き出す重要な仕組みになると語った。
 具体的な目標として、経済成長率を3%超へ引き上げること、投資支出の比率をGDP比30%近くまで高めること、4年以内に国の競争力を世界上位20か国・地域の水準へ引き上げることを掲げた。これらの目標を実現するため、6か月、1年、さらに政権任期全体を対象とした指標を設け、進捗状況を継続的に検証する。
 副首相兼財務相は、これまで産業界や経済団体、各業界の事業者と意見交換を重ねてきた結果、タイ経済は成長機会を欠いているのではなく、複数のボトルネックを同時に抱えているとの認識で一致したと説明した。
 官民合同委では民間部門の役割をこれまで以上に重視する。民間企業は投資やイノベーション、雇用創出の担い手であり、タイと世界市場を結びつける存在であることから、国の潜在力を具体的な成果へ転換する主体と位置付ける。一方、政府は制度上の障害を取り除き、インフラを整備し、規制を見直すほか、行政手続きの迅速化と透明化を進めることで競争力の向上を後押しする役割を担う。
 官民合同委は、相互に連動して経済を動かす4つの主要エンジンを軸に運営される。
 第1のエンジンは「ニューエコノミーとインフラ」。将来の経済基盤とインフラ整備を進めるもので、スマートエレクトロニクス、データセンター、AIインフラ、次世代自動車、クリーンエネルギー、高度技術産業などへの投資誘致を重点課題とする。単に投資額を増やすだけでなく、新規投資を通じてタイ経済全体の高度化を図ることを目指す。
 第2のエンジンは「貿易とローカライゼーション」。タイ経済と世界市場との結びつきを強化し、中小企業(SME)や地域社会へ成長機会を広げる。質の高い観光、タイ製品・サービス、次世代農業・食品、ソフトパワー、貿易・投資振興を通じて、タイ企業を新たなバリューチェーンへ組み込む考えだ。
 第3のエンジンは「人材」だ。タイの人材を新たな経済環境へ適応させる。現在の労働市場の課題は雇用不足ではなく、経済構造の変化に人材の技能が追い付いていない点にあると指摘した。このため教育や研究開発、イノベーションの強化に加え、リスキルやアップスキル、AI・デジタル分野の能力向上を急ぐ。
 タイ人が成長の波に取り残されることなく、より質の高い雇用機会を得られる環境づくりを進める。
 第4のエンジンは「政府」。政府部門を経済成長の障害から支援役に転換する。不要な規制の削減、デジタル政府の推進、事業環境の改善を進め、認可や許認可手続きの迅速化、透明性、予見可能性の向上を図る。
 会議では、4つの経済エンジンに対応する4つの小委員会の設置を原則承認した。各小委員会は戦略課題や短期成果案件(クイックビッグウィン)、目標、評価指標、実施計画を策定する。
 対象期間は緊急対応の6か月、中期の1年、長期の4年とし、進捗状況を2か月ごとに官民合同委へ報告する。会議を開いて終わりにするのではなく、継続的に成果を検証する体制を整える。エークニティ氏は、すべての提案について、「誰が責任を負うのか」「どのように実行するのか」「いつ成果が現れるのか」という3つの問いに明確に答えることを求めると述べた。各案件ごとに責任主体と実施計画を定め、成果に対する説明責任を明確にする方針だ。
 同副首相は、副委員長として新規投資の推進を担当する立場から、国の重要なボトルネック解消に取り組む考えを示した。投資受け入れに必要なエネルギーや水資源の確保、AIインフラやデータセンター整備、投資案件向けファストパス制度の推進、投資の障害となる規制の見直しなどを進める。
 さらに、新規投資の成果を中小企業や労働者、国内サプライチェーンへ波及させる仕組みづくりにも取り組む。将来の成長分野として、スマートエレクトロニクス、観光、農業・食品加工、医療・ウェルネス、小売・商業、次世代自動車、クリエイティブエコノミーの7分野を重点産業に位置付けた。
 これらはタイが競争力を持ち、高付加価値の創出や投資拡大、質の高い雇用創出につながる分野だとしている。
 目標は単にGDPを押し上げることではない。より強力な成長エンジンを構築し、競争力を高め、より幅広い機会を生み出すことにある。特に中小企業が新たなバリューチェーンへ参入し、サプライヤーやサービスプロバイダー、ビジネスパートナーとして成長できるよう支援する方針だ。
 技術力や生産性、品質基準の向上を通じて、より高い付加価値を生み出せる企業への転換を促す。こうした運営方針は、政府が掲げる「5T」の原則に沿って進められる。
 5Tとは、Target(目標設定)、Transition(移行)、Transformation(変革)、Transparent(透明性)、Together(協働)を指す。
 タイの国際的な立ち位置を明確にし、目標に即した成長エンジンへの転換を進め、規制や制度上の障害を取り除く。測定可能な目標を設け、官民が連携しながら改革を進める。
 世界ではサプライチェーンの再編が進み、テクノロジーが生産拠点の在り方を変えつつある。エネルギー、食糧、デジタル、地政学が投資判断の重要な要素となるなか、この機会は待ってはくれず、従来と同じやり方を続ける国には訪れないと指摘。「新たな官民合同委は『チーム・タイランド』づくりの出発点だ。官民が力を合わせ、タイを新たな世界秩序の追随者ではなく、地域の重要な経済拠点へ押し上げ、すべてのタイ国民に新たな機会をもたらしたい」と述べた。

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