Gastech 2026開催へ=エネルギー安全保障とAI時代の需要増に焦点
エネルギー省は、タイ会議・展示会振興機構(TCEB)、DMGイベントズ、タイ発電公団(EGAT)、PTTと連携し、世界最大級のエネルギー会議・展示会「Gastech 2026」の開催準備が整ったと発表した[=写真]。天然ガスや液化天然ガス(LNG)、低炭素技術、発電システムに加え、急拡大するAIやデータセンター向けエネルギー需要も主要テーマとなる。世界150か国以上から5万人超の関係者が集まり、エネルギー安全保障とエネルギートランジションの両立に向けた議論を展開する。イベントを通じ、アセアンのエネルギーハブとしてのタイの存在感を高めたい考えだ。

◆世界150か国・5万人超が集結
エネルギー省は6月17日、TCEB、DMGイベントズ、EGAT、PTTと共同で記者会見を開き、9月14~17日にBITEC会議場で開催する「Gastech 2026」の概要を発表した。
Gastechは天然ガス、LNG、低炭素技術、発電システム、エネルギー分野向けAIなどをテーマとする世界最大級の会議・展示会として知られる。世界各国のエネルギー担当閣僚や政府高官、国営エネルギー企業、民間企業、投資家、技術開発企業などが参加し、エネルギー安全保障や脱炭素化、次世代エネルギーシステムの構築について議論する。
会期中には戦略会議やビジネス商談、技術展示、投資セッションなどが行なわれる。世界のエネルギー分野のリーダーが集まり、将来のエネルギーシステムの方向性や投資機会について意見交換する場となる。
主催者によると、会期中は世界150か国以上から5万人超の来場者を見込む。18件を超える会議・セミナーが開かれ、閣僚級会合、企業経営者向けフォーラム、技術会議など幅広いプログラムを実施する。1000人を超える講演者が参加し、世界のエネルギー市場や技術革新の方向性について知見を共有する予定だ。
展示会には世界の大手企業や有力企業1000社以上が参加する見通しで、エネルギー安全保障の強化やエネルギー効率の向上、温室効果ガス排出削減を支える最新技術やソリューションが紹介される。
タイ政府は、今回の開催を通じてタイが地域のエネルギー拠点であることに加え、国際的なビジネスイベント開催地としても高い競争力を持つことをアピールしたい考えだ。
◆アジアが世界の需要拡大を牽引
プラスート・シンスックプラスート・エネルギー省次官は、世界がこれまで以上に複雑なエネルギー課題に直面していると指摘した。急速な都市化や産業発展、電化の進展、先進国と新興国の双方で続く経済成長が背景にある。
同次官は「将来の世界経済はエネルギー資源へのアクセス、エネルギーインフラの整備、エネルギー分野への投資に大きく左右される」と述べた。また、「エネルギーシステムの転換とイノベーション開発を通じて、安全保障や安定性、長期的なレジリエンスを維持しなければならない」と強調した。
アジアは世界のエネルギー需要を牽引する主要地域になっている。同次官は、地域レベルでの協力やインフラ投資、長期的なパートナーシップの構築が、数十億人規模の人口を支えるエネルギー供給体制の確立に不可欠だと述べた。
同氏は、タイが知識共有や国際協力、エネルギー安全保障、経済成長、持続可能性を支える政策議論の拠点となる準備が整っていると説明した。Gastech 2026は単なる展示会ではなく、世界のエネルギー分野のリーダーが集まり、将来のエネルギーシステムの方向性を共に定める戦略的な舞台になると語った。エネルギー安全保障の強化や経済成長の実現、アジアの産業競争力向上にもつながる重要な機会になると期待を寄せた。
◆AI・データセンターが新たな電力需要
こうした期待の背景には、東南アジアにおける急速なエネルギー需要の増大がある。国際エネルギー機関(IEA)によると、東南アジアは2035年までに世界のエネルギー需要増加分の約25%を占める見通しだ。
アセアン各国で経済成長と産業化が進むなか、近代的なエネルギーインフラ、十分なLNG供給、安定した発電システム、長期的なエネルギー投資への需要が高まっている。AIやクラウドインフラ、データセンターといった新世代技術の普及が、エネルギー需要をさらに押し上げている。
IEAは、世界のデータセンターによる電力需要が2030年までにほぼ倍増すると予測している。タイでもデータセンター投資は急拡大している。今年5月には総額9581億6800万バーツを超える大型投資プロジェクト6件が承認された。その大半はデータセンターやグローバル規模のデータ処理事業だった。安定的に適正価格でエネルギーを供給できる体制を構築し、世界のテクノロジー企業による投資を継続的に呼び込むことができれば、タイは地域のデジタル経済とAI産業の中核拠点へ飛躍できるとの期待も高まっている。
近年の地政学リスクの高まりやエネルギー市場の変動は、エネルギー供給源の多様化とエネルギー安全保障確立の重要性を改めて浮き彫りにしている。こうした状況を踏まえ、Gastech 2026は政府機関、エネルギー企業、テクノロジー企業、投資家が連携し、投資拡大や具体的な行動計画の策定につなげる戦略的なプラットフォームとなる。
タイにとっても象徴的なイベントだ。アヌティン首相兼内相は、Gastech 2026と「Bangkok Energy Summit」の開会式に出席する予定。政府は、タイが国際協力の拠点であり、エネルギー安全保障と持続可能な経済発展を支える中心的な役割を担う存在であることを示したい考えだ。
TCEBのジャルワン・スワンナサート副総裁は、Gastech 2026をタイのMICE産業の実力を示す重要な舞台と位置付ける。「厳しい経済環境に対応しながら、将来を見据えた持続可能な産業発展を後押しする成果を生み出すことができる」と述べた。
今回の開催準備は官民の関係機関が一体となって協力してきた成果だと強調した。Gastech 2026は世界市場がタイのビジネス機会にアクセスするためのプラットフォームとなるだけでなく、タイの政府機関や企業にとってもエネルギー分野の最新知識や新たな潮流、国際的なパートナーに触れる機会になると説明した。
さらに、このイベントが長期的な経済効果を生み出す「レガシー・イベント」のモデルケースになるとの見方を示した。タイにもたらす経済効果は146億2000万バーツを超える見通しで、未来産業分野の国際イベント誘致やタイの展示会産業の発展にもつながると期待している。タイを持続可能な展示会ハブへ押し上げる重要な原動力にもなるとした。
◆電力網連結でエネルギー安保強化
エネルギートランジションの実現に向けては、電力システムそのものの高度化も重要な課題となっている。EGATのタウィワン・ダーンウィライ副総裁(燃料担当)は、エネルギー安全保障、経済競争力、環境の持続可能性は相互に切り離すことのできない課題になっていると指摘する。
同副総裁は「エネルギートランジションはもはや一国だけの課題ではなく、すべての国が共有する使命になっている」と指摘した。その実現には国境を越えた協力が不可欠だとしたうえで、「安定的で持続可能なエネルギートランジションを実現する鍵は協力にある」と強調した。
EGATは電力エネルギーのエコシステム全体を結びつける役割を担うことを目指している。電源の多様化とバランス確保を進めるほか、より近代的で柔軟性の高い電力システムの構築に取り組んでいる。
再生可能エネルギーの導入が進むなかでも、電力系統の安定性を維持しながら、利用者にとって適正で公平な価格で電力を供給できる体制を整備する。こうした取り組みはタイの産業競争力を支えるだけでなく、将来的にタイを地域のクリーンエネルギー拠点へ発展させる基盤になるとしている。
なかでもEGATが重視しているのが、域内の送電網連結を目指す「アセアン・パワーグリッド」構想だ。各国の電力網を相互接続し、国境を越えた電力融通を可能にするもので、域内のエネルギー安全保障向上に向けた重要プロジェクトと位置付けられている。
EGATは、この構想によって再エネを含むクリーン電力の相互利用を拡大し、経済機会の創出と持続可能なエネルギーシステムの構築につなげたい考えだ。将来の燃料技術や安定供給が可能な低炭素エネルギー技術の開発も継続する。ネットゼロの達成を見据え、安全でクリーンなエネルギー供給体制の構築を進めていくとしている。
◆天然ガス・LNGが転換期支える
タイ最大のエネルギー企業であるPTTは、エネルギートランジションの過程において天然ガスとLNGが引き続き重要な役割を担うとの考えを示した。上流石油・天然ガス事業グループのバンディット・タマプラチャムチット最高執行責任者(COO)は、世界的なエネルギー需要の増大と脱炭素化が同時に進行していると指摘した。
そのなかでPTTは、「エネルギー・トリレンマ(Energy Trilemma)」の考え方を軸に事業展開を進めているという。同社が掲げる3つの柱は、エネルギー安全保障(Security)、競争力のある価格での供給と利用可能性(Affordability and Competitiveness)、持続可能性(Sustainability)だ。
同氏は「エネルギー転換は持続可能で均衡の取れた形で進めなければならない」と述べた。
また、天然ガスとLNGは今後も重要なエネルギー源であり続けるとの見方を示した。天然ガスは発電システムの安定性を維持しながら、石炭などと比べて温室効果ガス排出量を抑えることができるため、エネルギー転換期における有力な選択肢になるとしている。さらに、LNGを含む天然ガスインフラは、エネルギー供給の安定性確保と経済競争力維持の両面で重要な役割を果たすと説明した。
同氏は、Gastechが生産者、購入者、インフラ開発事業者、政策立案者を結び付ける世界的なプラットフォームになっていると評価した。信頼性が高く、十分かつ持続可能なエネルギー供給体制の構築に向けて国際協力を強化し、エネルギー安全保障の向上につなげることが重要だと指摘した。こうした取り組みは経済成長を支える基盤となるだけでなく、地域のエネルギー産業や関連産業の長期的な発展にも寄与すると述べた。
◆AI時代見据え新会議「AixEnergy」
今回の開催にあたり、主催者であるDMGイベントズもアジア市場の重要性を強調した。クリストファー・ハドソン社長は、「アジアがエネルギー成長の中心地として台頭するなか、この地域で行なわれる戦略的な意思決定は世界のエネルギー市場の方向性を左右している」と述べた。
今回、Gastechが3年ぶりにアジアで開催されることが大きな意義を持つという。政府機関、エネルギー企業、投資家、テクノロジー分野のリーダーが一堂に会し、エネルギーを巡る課題への対応や将来の成長機会について議論する場になるとの期待を示した。
開催地となるバンコクについても、「戦略的に最適な立地だ」と評価した。エネルギー省や共催機関と連携しながら、国際協力の強化や投資活性化、長期的なエネルギー安全保障の構築につながるプラットフォームとして発展させていきたいと語った。
今回、新たな試みとして「AixEnergy」が立ち上げられる点も注目される。AIやデジタルインフラ、次世代エネルギーシステムに特化した会議・展示会で、AI産業とエネルギー産業の融合をテーマに掲げる。
AIの普及に伴い、データセンターやクラウドサービスの電力需要は急速に拡大している。その一方で、電力供給の安定性やエネルギーコストの上昇、送電網整備など新たな課題も浮上している。
AixEnergyでは、AI経済の発展を支えるために必要なエネルギーシステムの構築や、デジタルインフラとエネルギーインフラの連携について議論が行なわれる。エネルギーシステムの安定性や利用可能性、長期的なレジリエンスをどのように確保していくかについても意見交換が行なわれる見通し。
世界のエネルギー需要構造が大きく変化するなか、Gastech 2026はエネルギー安全保障、エネルギートランジション、AI時代の新たな需要への対応を議論する国際的な舞台となる。タイは開催国として、アセアンのエネルギーハブとデジタル経済拠点という2つの役割を強化し、地域のエネルギーと産業の将来像を描く中心的な存在としての地位確立を目指している。
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