2026年7月17日(金)号

FTIとJCCが共同政策提言=自動車産業の競争力維持へ

 タイ工業連盟(FTI)とバンコク日本人商工会議所(JCC)は7月14日、タイの自動車産業が技術革新や世界経済の変化に対応するための政策について協議した。両者は政策提言を共同で取りまとめ、政府に提出する方針を確認した。
 協議には、FTIのピムチャイ・リーイサラヌクン会長[=写真左]、JCCの山下典昭副会頭兼自動車部会長[=写真右]らが出席した。


 FTIは、産業政策「タイ産業の新章:5Iで成長力を引き出す」(The New Chapter of Thai Industry: Empowering Growth with 5I)のうち、自動車産業に関係する3分野を重点項目として説明した。
 第1は「インテリジェント・インダストリー」(I1: Intelligent Industry)で、AIや自動化システム、スマート・マニュファクチャリングを導入し、生産の高度化を図る。
 第2は「イノベーション&クリエイティブ・インダストリー」(I2: Innovation & Creative Industry)で、新技術の開発や製品の高付加価値化を進め、タイ独自の技術とブランドを育成する。
 第3は「国際連携・ネットワーク」(I3: International Alliance & Network)。海外企業や関係機関との協力を広げ、投資と技術移転を呼び込み、世界のサプライチェーンとの結びつきを強める。
 FTIは、低迷する国内自動車市場の回復に向けた対策も提案した。自動車購入に対する所得税控除、旧型車から新車への買い替えを支える下取り制度、融資審査基準の緩和、バイオディーゼルB20の利用拡大などを政府に求めた。
 新車需要を喚起して国内生産を回復させ、自動車産業と関連部品産業の雇用を維持する狙いがある。
 JCCは、タイが自動車生産拠点としての地位を維持するための政策を提言した。税制や規制の見直し、FTA交渉の加速、輸出優遇措置の拡充などを挙げ、世界市場でタイの自動車工業が競争力を保てる事業環境を構築する必要があると訴えた。
 両者は今後も協議を続け、政策提言の実現を政府に共同で働きかける。既存の自動車生産基盤を維持しながら、タイを域内の次世代自動車生産拠点へ転換する考えだ。
 タイの自動車業界は、安価な輸入EVの流入から国内のサプライチェーンを守るため、政府に対し、EV生産で国内生産部品の使用を増やすよう求めている。
 FTI自動車部会のスワット・スパカーンデーチャクン部会長は、自動車用シート、電気配線、フロントガラスなど、幅広い車種に共通して使われる部品について、国内で調達することで量産効果を高め、生産費を抑えながら品質基準を確保できると述べた。
 タイ国内ですでに生産されているシャシーなど、付加価値の高い部品も優先的に使用すべきだと述べた。政府には、こうした部品の使用を支援し、関連費用を税制優遇の対象とするよう求めた。
 スワット氏によると、FTIは海外のバッテリーEVメーカーにタイ製部品の調達を義務付けることで、内燃機関車メーカーがこれまで取り組んできた現地調達と同様の仕組みを構築することで、国内のサプライチェーンを守るよう求めている。タイが東南アジアの自動車生産拠点としての地位を維持するには、こうした戦略が極めて重要だと説明した。
 もう一つの差し迫った問題として、輸入部品を使ってタイで組み立てた製品を、米国が「迂回輸出」とみなす可能性を挙げた。米国は、こうした生産形態を理由に、タイから輸入する製品により高い関税を課す可能性がある。
 FTIは、関税問題を担当する下院委員会と協議を進める一方、自動車産業を守るため、EV生産における現地調達比率に関する規則を厳格化するよう働きかけている。
 タイの2026年の自動車生産目標は150万台で、このうち95万台を輸出向けとしている。ただし、戦争の影響でホルムズ海峡を通る海上輸送に混乱が生じているため、FTIは生産目標の見直しを検討している。スワット氏は、タイから中東地域への輸出額のうち、自動車が20%以上を占めると指摘した。
 タイ自動車工業会(TAIA)のユピン・ブンシリチャン会長は、国内の自動車メーカーや部品供給会社を守るため、完成車として輸入されるEVに対する物品税の仕組みを見直すよう政府に求めた。
 国内で組み立てられた自動車の購入を呼びかけるキャンペーンも提案した。購入費用の一部を個人所得税の減税で相殺できる仕組みを設け、国産車の需要を喚起する考えだ。TAIAはこのほか、EV需要の拡大に向け、政府機関が公用車としてEVを導入することも提言した。

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