2026年9月9日(水)号

BOIが日本企業のタイ投資継続を強調=生産拠点を高度化、新技術に対応

 投資委員会(BOI)は、日本企業によるタイへの投資が新たな段階に入っていると明らかにした。数十年にわたり蓄積してきた生産拠点を基盤に、技術の高度化、効率向上、新製品開発への投資へと広がり、産業の転換に対応している。2025年には日本企業による投資申請が302件、投資予定額は1137億バーツを超え、前年から2倍以上に増加した。日本からの年間投資額としても過去最高水準の一つとなり、日本企業がタイで投資基盤を継続して拡大していることを示した。「タイは第2の故郷」という日本企業にとっての姿も改めて鮮明になったとしている。
 ナリット・トゥードサティラサックBOI事務局長[=写真]は、日本が長年にわたりタイにとって重要な投資パートナーで、特に自動車、電子・電気、機械産業を中心に、タイの産業基盤とサプライチェーンの形成で重要な役割を果たしてきたと説明した。
 現在、日本企業の投資は転換期に入り、技術の高度化、効率と生産性の向上、より付加価値の高い製品の開発に重点を移し、世界の産業構造の変化に対応しようとしている。
 日本からの投資額が飛躍的に増えていることにも、その動きが明確に表れている。2025年の日本企業による投資申請は302件、投資予定額は1137億バーツを超え、前年の2倍以上に増加した。日本の年間投資額としても過去最高水準の一つだった。
 日本企業の主要産業である自動車・部品産業の投資申請額は283億1000万バーツで、前年比57%増加した。電子・電気産業は193億7800万バーツで76%増、農業・食品産業は40億6900万バーツで54%増、物流・サービスは14億6800万バーツで前年の2倍以上に増加した。
 デジタル事業、航空機・部品産業などでも投資の多様化が始まり、投資額が大きく増加した。既存産業基盤を高度化しながら、技術を活用して高い付加価値を生み出す事業へ継続的に広がっていることを示している。
 こうした方向性は、2026年上期の日本人商工会議所(JCC)の調査結果とも一致する。回答した504社の日本企業のうち23%が2026年にタイで投資を増やす計画を示し、48%が従来の投資水準を維持する見通しと回答した。
 投資形態を見ると、日本企業は既存の生産拠点の効率改善を重視している。特に既存設備を更新する機械への投資、クリーンエネルギーの利用、デジタル技術の導入、より高度な技術を活用した新製品開発に重点を置いている。タイの生産拠点の効率と競争力を引き続き高める姿勢が示されている。
 こうした信頼感は、主要な投資プロジェクトにも明確に表れている。特に自動車産業では、いすゞが150億バーツを超える投資奨励の認可を受け、タイのピックアップトラック生産拠点を自動化・ロボット、クリーンエネルギーの活用、ユーロ6基準に対応する製品開発によって高度化する。
 マツダは合弁会社のオートアライアンス・タイランド(AAT)を通じて74億バーツを超える投資奨励の認可を受け、新型マツダ車のMHEV生産に対応できるよう工場を改良する。マツダはタイを主要生産拠点に選び、タイ国内で販売するほか、日本とアセアンへ輸出する。
 三菱自動車は首相と面会し、2030年までにタイでさらに160億バーツを投資する計画を発表した。電動車技術に対応するほか、タイを新型「パジェロ」の生産拠点とし、国内販売と世界への輸出を予定する。
 ホンダも2029年までに120億バーツを追加投資し、新型車2モデルの生産ラインを立ち上げる計画を発表した。これにより、タイは日本国外でホンダが計8モデルを生産する唯一の国となる。タイが引き続き重要な生産拠点であり、将来さらに成長できる潜在力を持つことを示した。
 自動車産業のサプライチェーンへの投資も、次世代自動車技術向け部品へ移行している。アステモは35億バーツの投資奨励認可を受け、電動車の駆動システム向け電力制御・変換システムの主要機器「PCUインバーター」を生産する。アイシン・パワートレインもハイブリッド車向けトランスミッションの生産に投資する。
 工場、生産する新型車、サプライチェーンの主要部品まで、自動車産業全体で転換が進んでいることを反映している。
 電子産業も、日本企業が投資を大きく拡大している分野の一つとなっている。特に高度技術を利用する電子部品への投資が目立つ。
 ムラタ・エレクトロニクスは、スマート電子機器や自動車に使用される積層セラミックコンデンサー(MLCC)などの高度電子部品の生産に投資する。
 パナソニック・マニュファクチャリング・アユタヤは、プリプレグや銅張積層板(CCL)など、電子回路基板向けの川上材料の生産に投資する。新工場は「MEGTRON」材料のアセアン初の生産拠点となり、デジタルとAIの成長に対応する。
◆高付加価値事業へ投資拡大
 自動車と電子産業以外でも、日本企業は技術を活用した高付加価値事業への投資を幅広い産業で拡大している。
 ミネベアミツミ傘下のNMB―ミネベア・タイは26億バーツを超える追加投資を実施し、ロッブリ県に新工場を開設する。エアバスとボーイング向けの高精度航空機部品を生産し、タイを同グループの航空事業における世界の主要生産拠点へ引き上げる。アユタヤ県には研究開発センターも設立する。
 農業・食品分野では、東洋製罐が24億7000万バーツの投資奨励認可を受け、野菜・果物を原料とする飲料、茶、コーヒーを生産する。
 岩谷産業は8億4000万バーツを投資し、液化バイオ二酸化炭素を生産する。CCU技術を利用し、農産物原料の発酵工程から二酸化炭素を回収して産業分野で再利用する。タイの農業・食品産業基盤を高付加価値製品へ発展させ、資源を効率的に利用する動きを示している。
 2026年上期も、日本企業による投資申請は続き、123件、投資額327億9000万バーツに達した。日本が引き続きタイを主要な投資拠点として選んでいることを改めて示した。
 BOIは、既存の生産拠点の高度化と効率向上、新分野への投資を引き続き支援する。特に高度技術を利用する事業、未来産業のサプライチェーンに属する事業、研究開発、タイでの地域統括本部の設立を支援する。
 現在、BOIから投資奨励を受けている地域統括本部事業の40%以上を日本企業が占めている。
 ナリット事務局長は、「日本は長年にわたりタイにとって重要な投資パートナーで、今後も継続して成長する潜在力がある。タイにおける日本の投資基盤は止まっているわけではなく、技術と世界経済の変化に合わせて変革し、高度化している」と述べた。
 「BOIは、タイ政府が既存事業の高度化と新分野への投資の双方を支援する用意があると確信している。日本企業がタイを地域と世界市場向けの事業、技術、サプライチェーンを発展させる重要拠点として活用し、タイと持続的に成長できるよう支援していく」と語った。

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