2025年3月7日号(金)

経済3団体合同常任委員会=貿易戦争と経済成長の減速を懸念

 経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)は3月5日に開いた月例会見[=写真]で、景気動向を発表し、米国の輸入関税を引き上げがタイの輸出に及ぼす影響について懸念を表明した。特に、鉄鋼とアルミニウムの輸入関税は10%から25%に引き上げられるほか、自動車、半導体、医薬品にも追加関税が課される見通し。米国はまた、「相互関税(Reciprocal Tariff)」を導入し、自国が不利な関税を課されている国々に対抗措置を講じる方針を示している。これによりタイの輸出品の平均関税が6~8%引き上げられる可能性がある。


 JSCCIBは、こうした貿易摩擦がタイの輸出業者に及ぼす影響を最小限に抑えるため、政府と民間セクターが協力し、包括的な貿易データを収集するよう提案した。貿易収支、サービス収支、デジタル経済、輸送業、教育分野など、多面的なデータを活用し、米国との貿易交渉を進めるよう進言した。また、輸出市場の多様化を進めることを進言。また、輸出市場の多様化を進めることで、米国市場への依存度を低減する必要があると指摘した。

◇タイ経済の減速傾向が顕在化
 2024年第4四半期のタイの経済成長率は3.2%にとどまり、予測値の4.0%を下回った。通年の経済成長率も2.5%にとどまった。製造業の生産縮小が主な要因。一方、輸出は引き続き堅調に推移しているが、自動車、化学製品、ゴム・プラスチック、電子機器、建材などの主要産業では輸入品との競争が激化している。
 2025年の経済見通しについて、海外の調査機関は当初2.7%と予測していたが、現在は2.6%に下方修正されている。貿易政策の変化や生産セクターへの圧力が続く中、国内需要の脆弱性が懸念されている。タイ中央銀行も景気の減速に対応するため、政策金利を引き下げた。JSCCIBは、貿易政策への適応、政府支出の加速、企業コストの削減、産業の競争力の向上といった追加措置が必要と提言した。
 2025年の経済成長率は2.4~2.9%と予測され、物品輸出は1.5~2.5%の成長を見込んでいる。インフレ率は0.8~1.2%と予測し、全体的な経済成長率は潜在成長率を下回る可能性が高いとしている。

◇債務者援助策の拡大
 JSCCIBは、タイ中央銀行が債務者援助プログラムの「あなたは闘い、私たちは助ける」の申請期限を4月30日まで延長したことを評価した。このプログラムは、零細企業や個人債務者の救済を目的としており、対象となる債務者は210万人にのぼる。申請者数は82万人に達し、約99万件の債務が再構成される。
 同プログラムには、①商業銀行と政府系特殊金融機の債務者向けの利払い猶予と月々の返済額削減、②商銀、政府系特殊金融機関、ノンバンクの少額債務の部分放棄、③ノンバンクの債務者向けの金利減免と月々の返済額削減の3つの措置が講じられている。JSCCIBは、これらの措置が家計の負担軽減につながるとし、政府が今後も債務問題への取り組みを継続するよう期待を示した。
 また、ナショナル・クレジット・ビューロ(NCB)による包括的な信用データの整備、制度外債務のデータベースの構築、労働市場のスキル向上支援、公正な競争環境の確立が重要と強調した。

その他のニュース

[経済ニュース]

タイ荷主評議会=米中貿易戦争の影響に警笛

米国の貿易政策を警戒=タイ商議所が特別チーム設置を提案

アマタ・コーポレーション=ラオスにスマート&エコシティ

国営企業の予算執行=目標を18%上回る

国家信用保証機構=設置法案を閣議提出へ

相続税収が急増=過去1年で累積税収の3割超

ホームプロ=24年は減収増益

パオプーム財務副大臣=ベンツの工場を視察

EEC地域への電力供給=制度改革の早期実現求める

[社会ニュース]
サイバー攻撃被害=1日平均2.8万件

カンボジアで保護のタイ人=出入国管理法違反で逮捕・拘留

覚醒剤所持容疑=マレーシア歌手に無罪判決

Kポップへの熱狂度=タイは世界3位

バンコクケーブルが森林保護=メーファールアン財団と提携

[トピックス]
アユタヤ銀行が創業80周年=Shaping Future Together~ESGとデジタルで次の時代へ

[インタビュー]
セーター・タウィーシン=前首相

[企業]
WHAコーポレーション=向こう5年で1190億バーツを投資

[BOI認可事業]
1月28日認可5事業

あわせて読みたい
無料トライアル 【無料トライアルのご案内】 タイ経済パブリッシングは毎日(土日祝を除く)、A4サイズのPDF版ニュースレターを定期購読者様にメール配信しております。 購読料金...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次