燃料価格抑制を転換=上限措置断念、重点支援策に軸足
タイ政府は、中東戦争に伴うエネルギー価格の高騰を受け、今月初めに導入した燃料価格の上限措置を撤廃した。影響を強く受ける分野への重点支援へと政策を転換する。エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相[=写真]は3月25日、エネルギー危機と紛争の影響に対応するため、5つの主要分野を対象とした支援策を準備していると明らかにした。アヌティン首相は、政策転換が家計に影響を及ぼす可能性を認めつつも、生活費への影響を緩和するため各政府機関が対応していると述べ、「全員が最善を尽くしている」と強調した。

エークニティ氏によると、国による支援の対象は、第1に、年収10万バーツ未満の脆弱世帯で、約1340万人にのぼる。政府は国家福祉カード制度を通じ、給付を上乗せする形で財政支援を実施する方針で、既存の給付に加えて月額300バーツを3か月間支給する方向で財務省が検討を続けている。
第2に、物価形成に大きな影響を持つ公共交通と物流部門への支援を拡大する。同部門には約36万人のトラック事業者と3万人の路線バス運転手が含まれる。支援は燃料バウチャー、プリペイド式燃料カード、プロムペイを通じた現金給付、あるいは運輸事業者経由の支援などが想定されている。当局はさらに、バン運転手、タクシー運転手、バイクタクシー運転手への対象拡大も検討している。
第3に、農業分野では商業省主導で肥料を低価格で供給する。国家福祉カードに登録された多くの農家が脆弱層向け支援の対象にも該当するため、現金給付とコスト削減の両面で支援を受けることになる。
第4に、水産業には燃料費の低減を目的とした支援を行なう。運輸省は、従来の船舶用ディーゼルの代替として、パーム油を20%混合したバイオディーゼル(B20)の利用促進策を準備している。
第5に、公共事業の請負業者や産業・サービス部門の企業に対し、金融・財政面での支援を実施する。建設業者については、資材費や燃料費の上昇を反映するため、建設契約の補償メカニズムである「K値(エスカレーション・ファクター)」を調整し、工事の遅延や中断を防ぐ。企業向けには低利のソフトローンを提供し、危機下での資金繰り維持を支援する。一方で、燃料に対する優遇価格の導入は行なわず、各部門に対し世界的なエネルギー価格環境への適応を促す方針だ。
エークニティ氏は、国内のエネルギー価格を市場原理に委ねる方針を示した。価格上限は市場の歪みや買いだめ、過度な財政負担を招いたと指摘し、補助金に依存するのではなく、燃料物品税の引き下げなどで価格上昇圧力を緩和する方策を検討している。エネルギー省は軽油価格の上限を1㍑当たり35バーツに引き上げる可能性について検討していたが、価格上限を撤廃した結果、26日には軽油の小売価格は1㍑当たり6バーツ上昇し、38.94バーツとなった。
石油基金によると、補助金支出は軽油で1㍑当たり27バーツ、ガソリンで同9.70バーツに達していた。この結果、基金の負担は1日当たり約25億バーツに達している。基金の財源を確保するため、借入れ増と燃料に対する物品税の引き下げを計画している。プラスート次官は、「必要な措置はすべて準備しており、新内閣に提案して承認を求める」と述べた。
エネルギー当局は中東情勢の推移を注視しており、状況が緩和し原油価格が安定すれば、軽油価格の上限は33バーツに戻す方針だ。政府はまた、輸入石油への依存を低減しエネルギー安全保障を強化するため、バイオディーゼルの利用促進を進めている。パーム油由来のメチルエステルの混合比率を引き上げる。
パニック買いの影響で、軽油の1日当たり消費量は通常の約6700万㍑から8400万㍑へと急増している。3月1日から23日までの消費量は、2月の同期間と比べて3億㍑多かった。建設や物流分野を中心に、企業や消費者が備蓄を急いだことが背景にある。
当局はまた、特にタイ南部において近隣国への違法な燃料販売が発生していると報告している。タイの軽油価格は1㍑当たり33バーツ未満に抑制されていたのに対し、マレーシアでは危機前の22バーツから39バーツへと上昇しており、この価格差が越境需要を招いている。
◆電力料金は3案提示
中東戦争の影響により電力料金の上昇が見込まれるなか、エネルギー事業監督委員会(ERC)は、5~8月期の電力料金について3つの案を提示した。1㌔㍗時(ユニット)当たり3.95バーツ、4.08バーツ、4.59バーツの3つの料金案で、いずれの案も、4月末まで適用される現行の3.88バーツを上回る水準となる。ERCのプーンパット・リーソムバットピブン事務局長は、「新料金を4月1日に発表する」と述べた。
電力料金は、基本料金3.78バーツと、燃料費や政策関連費用を反映する燃料調整費(Ftチャージ)で構成される。ホルムズ海峡における石油・ガス輸送の混乱に伴う液化天然ガス(LNG)価格の急騰が電力料金上昇の主因となっているが、プーンパット事務局長は、LNG輸入への依存を減らすため、代替燃料の活用を進めていると説明した。
最も低い3.95バーツ案は、電力公団が未使用の予算94億バーツを電力料金の補填に充てる場合に可能となる。4.08バーツ案は、過去の電力料金補助により約360億バーツの負債を抱えているタイ発電公団(EGAT)への返済を停止する場合で、4.59バーツ案は、EGATに対する債務をすべて返済する場合。
LNG価格の上昇に対応するため、ERCはガス火力発電所からの電力購入を3.67%減の477億ユニットに削減し、ラオスの水力発電を中心に輸入電力を増やす方針を決めた。電力供給に占める輸入比率は13.7%から18.0%へと上昇する。プーンパット氏は、暑季の影響から5~8月の電力需要が7.2%増の773億ユニットに増大する見通しで、電力供給の慎重な管理が必要になると指摘した。
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