2026年4月30日(木)号

BOI投資申請額1兆バーツ超え=AI・デジタルが牽引

 投資委員会(BOI)事務局の4月29日の発表によれば、今年第1四半期の投資申請額は1兆169億6200万バーツに達し、600件超のプロジェクトの申請があった。デジタル、電子産業が最大の投資分野で、AIの成長を背景に投資を牽引した。ナリット・トゥードサティラサック事務局長[=写真]は、第1四半期の投資申請額が1兆バーツを超えたことは、タイが従来の製造拠点から、将来産業の拠点へと転換しつつあることを示す明確なシグナルだと述べた。


 同事務局長は、特にデジタルやAIのサプライチェーンは、世界経済の中核となりつつあり、不確実性の高い国際環境にあっても、タイは世界中からの投資を受け入れる準備が整っていることを証明したと語った。高度技術分野の投資において、インフラ、安定した電力供給、クリーンエネルギーの潜在力、質の高い人材、強固なサプライチェーン、政府の支援措置といった強みを有していると述べ、地政学的対立の渦中にない点も重要な要素だと指摘した。BOIは今後も積極的な取り組みを進め、タイを地域の投資拠点として確立するとともに、新たな産業の創出を通じて将来の成長基盤と質の高い雇用を生み出していくと述べた。
 ナリット事務局長によると、世界情勢の不確実性や生産拠点移転の流れが続くなかで、タイは引き続き投資家の関心を集めている。申請件数は624件で、投資額は前年同期比2.4倍に拡大した。特にデジタルと電子分野の大型案件が全体を押し上げており、タイが高度技術産業の投資拠点として信頼を得ていることを示している。
 主要な投資分野は、①デジタル・電子、②クリーンエネルギー、③農業・食品、④物流、⑤自動車。また、投資国ではシンガポール、英国、日本が上位を占めた。タイがAIやデジタル産業を中核とする「未来産業の拠点」としての地位を強化していることを裏付けるものとなった。
 今年1~3月に投資予定額が最も多かったのはデジタル産業で、投資予定額は8737億4100万バーツ(48プロジェクト)となった。データセンターやクラウドサービス分野への投資が中心で、TikTok、グローバルスイッチなど、シンガポール、日本、英国、マレーシアの主要企業が参入している。これらの投資は、タイが地域におけるデジタルインフラとAIの中核拠点としての役割を強化するものとなっている。
 第2位は電子・電気機器産業で、投資額は404億5600万バーツ(80プロジェクト)となった。高度電子部品やプリント基板(PCB)、データセンター向けの重要機器への投資が中心で、ハードディスクドライブ(HDD)、光通信機器(Optical Transceiver)、AIデータセンター向けサーバーなどが含まれる。
 主な投資企業は、セレスティカ、インベンテック、ウェスタンデジタル、ファブリネット、キヤノンなどで、米国、台湾、日本、シンガポール、香港の企業が名を連ねている。これらの企業の多くはすでにタイに生産拠点を有しており、AI時代の需要に対応するため、より高度な技術分野へ投資を拡大している。
 第3位はエネルギー/インフラ産業で、投資額は171億300万バーツ(108プロジェクト)となった。太陽光や風力などクリーンエネルギーによる発電事業への投資が中心で、タイ企業による参入が目立つ。タイのエネルギートランジションを後押しし、温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた重要な基盤となる。
 第4位は農業・食品産業で、投資額は169億6300万バーツ(61プロジェクト)となった。農産物の高付加価値化を目的とした加工分野への投資が中心で、天然ゴム製品や加工でん粉(モディファイドスターチ)の製造、畜産・種苗事業などが含まれる。主な投資企業は、シートラン・アグロインダストリーなどのタイ企業で、国内農業資源を活用した付加価値の創出が進められ、タイが農業原料を高付加価値製品へと転換し、国内市場と輸出市場の双方で競争力を高めるポテンシャルを有していることを示している。
 第5位は物流・高付加価値サービス分野で、投資額は145億4800万バーツ(68プロジェクト)となった。航空輸送事業への投資が中心で、タイ航空、タイ・ライオエア、バンコク・エアウェイズなど。このほか、バンコク・ゲートウェイ・ターミナルによる貨物ターミナル事業や、海上輸送関連プロジェクトも進められており、物流インフラの高度化と輸送能力の強化が図られている。
 このほか、その他のターゲット産業への投資も確認された。
 自動車・同部品産業では、新技術対応に向けた生産ラインの改良や、タイヤ、航空機用タイヤ、各種自動車部品の製造を中心に、投資額は133億2800万バーツ(63プロジェクト)を数えた。
 鉱業・金属・素材産業は117億3900万バーツ(63プロジェクト)、石油化学・化学産業は107億1700万バーツ(65プロジェクト)となり、基礎素材分野でも投資が拡大している。
 機械・オートメーション/ロボット分野への投資は80億8100万バーツ(38プロジェクト)に達し、産業の高度化と生産効率の向上に向けた動きが進んでいる。
 なお、データセンター/クラウドサービス分野への投資は総額8700億バーツ超に達し、この四半期の投資全体の86%を占めた。背景にはデジタル経済の急速な成長があり、特にAI技術の進展や企業のデジタルトランスフォーメーションの加速により、データ保管、クラウドサービス、高性能コンピューティングに対する需要が大幅に拡大していることが背景にある。こうした需要に対応するうえで、データセンターは不可欠な基盤インフラとなっている。
 一方で、BOIは、データセンター投資の拡大に伴う電力や水の大量使用、ならびに国内への利益還元についての影響も認識している。このため、データセンター向け投資奨励の条件を見直し、より適切な制度へと調整した。電力と水の使用効率について国際基準に沿った要件を設けたほか、投資申請前にエネルギー事業監督委員会(ERC)から電力供給の準備状況に関する認証を取得するよう義務付けた。これにより、各地域の発電・送配電計画との整合性を確保し、他のユーザーへの電力供給に支障が生じることを防ぐ。
 さらに、投資企業には、人材育成やタイの中小企業支援、国内サプライチェーンの強化といった具体的な便益創出計画の提出を求め、その実施完了を法人所得税優遇の適用条件とした。投資がタイ経済に対して実質的で持続的な利益をもたらすようにする。
 外国直接投資(FDI)は引き続き拡大している。外資による投資申請は427プロジェクト、投資予定額は9658億6900万バーツに達した。国・地域別では、シンガポールが8379億4100万バーツで最大となり、英国(471億5000万バーツ)、日本(225億9300万バーツ)、中国(173億2700万バーツ)、香港(160億9700万バーツ)、台湾(146億7900万バーツ)、米国(12億8200万バーツ)、オランダ(9億1500万バーツ)、マレーシア(6億2500万バーツ)、スウェーデン(3億5200万バーツ)の順となった。
 地域別では、投資の大半が中部に集中し、8315億3100万バーツ(237プロジェクト)となった。次いで東部が1499億9400万バーツ、南部が73億9500万バーツ、西部が59億7800万バーツ、北部が52億7900万バーツ、東北部が50億7800万バーツとなっている。
 さらに、BOIが推進する「スマート・持続可能産業(Smart and Sustainable Industry)」の高度化措置に基づく投資も引き続き関心を集めている。第1四半期の申請は61プロジェクト、投資予定額は70億7100万バーツとなった。省エネ、再生可能エネルギーの導入、機械設備の更新、自動化・ロボット導入、デジタル技術の活用による効率向上が中心となった。
 第1四半期に認可された投資案件は649件、投資額は3301億3200万バーツに達した。年間2000億バーツ超の国内原材料の使用、4万2000人以上の雇用創出、年間5200億バーツ超の輸出増が見込まれている。
 実際の投資実行に最も近い段階であるBOI証発給は738件、総投資額は3829億5400万バーツとなった。

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