首相がダボスで国際企業と会談=農業、医療、インフラ分野で協力目指す
スイスのダボスで開催されている世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)出席のためスイスを訪問したペートンターン首相は1月20日、チューリッヒ空港に到着[=写真]。翌21日にダボスに移動し、ネスレ、バイエルなどの有力企業幹部と個別に会談した。23日にはタイとEFTA(欧州自由貿易連合)の自由貿易協定の署名式が執り行なわれ、首相も立ち会う。

EFTAはスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの4か国で構成する自由貿易圏。昨年終わりに交渉が妥結し、1月13日の閣議でピチャイ・ナリプッタパン商業相による署名を承認済み。
昨年1~11月のタイとEFTAの貿易額は115億㌦で、前年同期比24.9%増加した。タイの国際貿易全体の2.05%を占めている。タイからEFTAへの輸出額は41.2億㌦、輸入額は73.5億㌦。
ピチャイ大臣は世界経済フォーラムの4つのセッションに出席する予定。非公式WTO閣僚会合(IMG)にも参加する。
首相は22日、世界経済フォーラムで開催されるタイランド・レセプションの開会挨拶で、タイが持つソフトパワーやクリエイティブ・エコノミー、多様でバランスの取れた味で世界的に有名なタイ料理をアピールした。タイ料理は先人の知恵やこだわりが息づいており、モダンな要素を取り入れて進化を続け、世界中の様々な食のニーズに応えている。「トムヤムクン」がユネスコに無形文化遺産として登録されていることも宣伝した。
首相はタイが農業分野のイノベーションに注力していることを強調した。AIやロボット、精密農業技術を活用して品質を向上させ、廃棄物を減らし、生産性を高めていると述べた。農業・食品分野のテクノロジーとイノベーションに投資し、持続可能で未来に適応する農業の実現を目指していること、タイが健康と福祉の分野でリーダーシップを発揮する準備ができていることを示し、タイへの投資を呼びかけた。タイは経済的な機会と潜在能力に満ちており、タイに投資することは、未来に投資することだと訴えた。
◆ネスレ
首相は21日現地時間午前10時にネスレのアジア・オセアニア・アフリカ地域最高経営責任者のレミ・エジェル氏と会談し、タイの農業への支援を要請した。タイ政府はスマートファーマーの育成に力を入れ、持続可能な農業の推進を目標としている。ビジネスのしやすさにも重点を置いており、民間企業がタイでの投資を拡大できるような環境の整備に取り組んでいると伝えた。タイは世界各国との自由貿易協定の締結を急いでおり、23日にはタイとEFTAがFTAに署名する。
エジェル氏は、ネスレがタイへの投資を今後も継続し、特にタイのコーヒー産業の持続的な成長を支援する方針を示した。2018年から2023年にかけて、ネスレはタイでコーヒー、UHT飲料、ペットフードの生産ライン拡張に228億バーツを投資している。25年にはさらに投資を増やし、特にネスカフェ工場の拡張や、タイの農家を支援してコーヒー栽培面積の拡大を進める予定。コーヒーは需要が大きく、価格も良いことから、タイの農家にコーヒー栽培に関する知識を提供する。ネスレは40年以上にわたってタイの農家を支援してきた。今後もタイの農家からはコーヒー豆を公正な価格で購入すると約束した。ネスレはタイ国内に9か所の工場を持ち、ネスカフェ、ミロなどの商品を生産している。
◆コカコーラ
コカコーラのジェームズ・クインシー会長兼CEOとの会談では、同社がタイで長年にわたって事業を展開し、雇用の創出や経済成長に貢献してきたことを評価した。また同社が持続可能な開発に貢献し、特にリサイクル可能なパッケージの推進や水資源の管理に取り組んでいることを称賛した。クインシー会長はタイ経済のポテンシャルに対する信頼を表明し、タイの農業従事者の技能向上と生活の質の向上で協力し、パートナーシップを強化していく意向を示した。
持続可能なパッケージ管理法(Sustainable Packaging Management Act)案に関し、首相はコカコーラが同法案の推進に重要な役割を果たしていることを評価した。今後、さらに協力を深めるべく、水資源の安全保障やソフトパワーの促進でも協力可能性について話し合った。
◆DPワールド
首相はアラブ首長国連邦のDPワールド社のスルタン・アハメド・ビン・スラエム会長兼CEOと会談した。同会長兼CEOとは昨年にセーター前首相が会談し、南部ランドブリッジ・プロジェクトを含むタイの大規模インフラ・プロジェクトへの参加を呼びかけている。
DPワールドはタイの経済成長の可能性を認め、特に戦略的な地理的条件を活用できる点に注目している。同社はラーカバンの内陸コンテナ基地(ICD)を多機能物流センターに開発するプロジェクトを支援している。レムチャバン港でのBバース・プロジェクトも支援している。ランドブリッジ・プロジェクトでは投資の可能性について調査を進めていることを伝えた。
◆バイエルAG
21日現地時間午後にはバイエルAGの取締役でファーマシューティカル部門の最高経営責任者(CEO)のステファン・ウルリッヒ氏と会談した。首相はタイ政府の農業振興の重要な目標について説明した。特に、米やトウモロコシといった経済作物を対象に、収量を増加させるための種子開発や新たなイノベーションによる公衆衛生の向上に注力していることを伝えた。医薬品や農業分野でのバイエルとの協力への期待を表明した。
首相はまたAIなどの未来産業にも触れた。特に若者のスキル向上やリスキルを進め、新たな機会と収入源を創出する政策を概説した。ウルリッヒ氏はタイが重要な投資拠点で、医薬品、健康、農業分野で協力したいと考えていると伝えた。首相が人材への投資を重視していることを称賛し、タイの発展を加速させる要因になるとの見解を披露した。
首相はバイエルがタイで、患者の治療アクセスの向上や、農業のイノベーションを通じて農家の生産性向上に貢献することを望んでいると述べた。
バイエルはライフサイエンス分野で世界をリードする企業で、タイでの事業は62年以上の歴史がある。タイには7つの拠点(オフィス、工場、研究センター)を持ち、1500人以上を雇用している。
◆アストラゼネカ
アストラゼネカのミッシェル・デマーレ取締役会長との会談では、同社がタイと長年にわたり協力してきたことに感謝の意を示した。タイが地域の健康・医療のハブに成長するための支援に謝意を示し、同社が糖尿病や癌などの治療薬の開発で世界を主導していることを称賛した。
首相はタイが医療/公衆衛生分野で東南アジアのハブになるための研究開発で協力に言及した。タイには医師や医療従事者を養成する優れた大学医学部があり、タイの医療・保健サービスに対する信頼を築いている。中東の患者がタイで治療を受けるケースが増えており、タイは多くの国にとって医療の目的地になっている。政府は研究開発とイノベーションの促進に力を入れており、外国からの投資を歓迎している。アストラゼネカと協力して、慢性非感染症(NCD)の課題に対応するための研究開発に積極的に取り組んでいきたいと伝えた。
デマーレ氏は、アストラゼネカが医薬品と健康管理の知識をタイのパートナーと共有し、バイオメディカルのイノベーションと健康アクセスの向上に向けた取り組みを推進していく意向を表明した。
◆セールスフォース
22日現地時間午後には米国のクラウドサービスス会社、セールスフォースの幹部と会談し、タイ政府と同社の協力の可能性について協議した。タイをデジタル社会に移行させるための協力強化を確認した。
首相は、タイ政府のデジタル経済政策の継続性と、グリーンエネルギーへのトランジションに対する意欲を伝えた。データセンターやデジタルインフラの開発に注力していることを示すとともに、女性や若者のデジタルスキルの向上を重視していることを示し、政府の「クラウド・ファースト」政策への支援を呼びかけた。中小企業やデジタルスタートアップの支援、クラウドサービスとAI技術に関する協力についても議論した。
◆グーグル
22日現地時間午後4時半からはグーグルのルース・ポラット最高投資責任者と会談し、グーグルのタイへの投資の進展具合を確認した。首相とポラット氏は昨年9月30日にも首相官邸で対談している。首相はクラウド・システムへの投資に限らず、タイを他のデジタル分野の拠点としても活用してほしいとの期待を表明した。タイ政府が投資を支援し、便宜を提供する用意があると伝えた。
ポラット氏はタイ政府の支援に感謝の意を示した。チョンブリ県で建設中のデータセンターの工事は順調に進んでおり、2年後に稼働を開始する予定と報告した。またグーグルがタイでの製品生産を拡大する計画を持っていることを伝えた。教育省と覚書を結び、タイの学生のデジタルスキルを支援していることも付け加えた。
全国でPM2.5が猛威=46都県でレッドゾーン
微小粒子状物質PM2.5による大気汚染がタイ全土に広がっている。地理情報学・宇宙技術開発機構(GISTDA)が22日午前8時に発表した直近24時間の各地のPM2.5の大気中濃度は全国77都県中、46都県で「人体にとって非常に危険」を意味するレッドゾーン、21県で「危険」を意味するオレンジ・ゾーンとなった。特にバンコクと周辺地域は深刻で、バンコクの学校の多くが対面授業を中止し、オンライン授業に切り替えた。産業界も対応に追われ、在宅勤務に切り替える事業所が増えている。バンコクは50区全てで深刻な大気汚染が発生している。
大気1立米中のPM2.5濃度の保健省による基準値は37.5マイクロ㌘以下。基準値を上回る状態が持続すると呼吸器系などの健康上の懸念が高まるほか、観光業にも大きな影響を及ぼす。PM2.5の発生源は大きく農業、運輸、建設、工業の4部門。特に農業部門では収穫期に畑を焼く行動が問題で、政府は対策に取り組んでいるが、タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長は取り組みを一層強化する必要があると指摘している。
22日にPM2.5濃度が100マイクロ㌘を超えた都県は、サムットサーコン(151.1マイクロ㌘以下同)、サムットソンクラーム(125.1)、サラブリ(121.1)、ペチャブリ(115.7)、ロッブリ(111.7)、ラチャブリ(110.1)、パトゥムタニ(108)、ナコンパトム(106.5)、アユタヤ(106.4)、カラシン(106.2)、ラヨン(105.5)、マハサラカム(104.9)、サケーオ(102.4)、アントーン(102.3)、サムットプラカン(101.6)、シンブリ(100.1)、チョンブリ(100.1)、バンコク(100.0)の各都県。それ以外のレッドゾーンは76.6~98.3マイクロ㌘を記録したノンタブリ、チャイナート、シーサケートなど28県で、多くは北部、東北部。
基準値以下を記録したのはラムプーン、パンガー、ラノン、スラタニ、チュムポン、ナコンシタマラート、クラビー、チェンライ、チェンマイ、メーホンソンの10県にとどまった。特に大気汚染が慢性化していたチェンマイは20.1マイクロ㌘、メーホンソンが16.1マイクロ㌘で、全国で最も澄んだ大気の状態を回復している。
バンコク都庁は22日、許可を得ていないトラックの都内の指定区域への侵入を禁止すると発表。259台のセキュリティカメラを使って監視し、違反者には法的措置を取ると警告した。チャッチャート・シティパン都知事は首都の大気汚染の原因として、大気の滞留、電車オレンジ線の工事にともなう渋滞の増加を挙げている。
最大野党である民衆党党首のナッタポン・ルアンパンヤーウット野党指導者は22日、首相がスイスで新鮮な空気を吸っている間、何百万もの人が酷く汚染された空気を吸い込んでいると、自身のフェイスブックページに投稿した。サトウキビ農家による焼き畑をやめさせるためのインセンティブ措置が閣議にかけられていないことを指摘し、政府の大気汚染対策に疑問を呈している。多くの農家がサトウキビの葉を燃やして収穫する安価な方法を選んでおり、そうしたサトウキビを砂糖工場に売ることを禁止する試みも効果が見られないと批判した。
ヂラユ・フアンサップ政府報道官は、首相が国を代表して海外の会議に出席し、世界のビジネスマンと会って、タイへの投資を呼びかけていると述べ、野党党首の皮肉まじりの批判に反論した。同報道官は「ナッタポン氏は良い野党指導者とはどういうものか学ぶべきだ」とコメントしている。
その他のニュース
[経済ニュース]
SET上場商銀の24年度決算=引当費用減で純利益7%増
デュシット・インター=フアヒンに多世代対応コンド
移動通信向け6周波数帯域=今年第2四半期に入札実施
サマート・コーポ=今年は30%増収を目指す
ITシティ=今年の総収入目標100億B
ポップマート=パタヤに地方1号店
[社会ニュース]
OPPO、リアルミー=警察に被害届を提出
コイン探しアプリ「JAGAT」=警察が自粛を呼び掛け
軍事裁判所法改正案を承認=民間人の告訴が可能に
モトGPのPTグランプリ=2月28日~3月2日に開催
[企業]
三菱電機カンヨンワタナー=売上高10%増を目指す
[レポート]
慢性腎臓疾患~健康保険の制度設計における教訓
[BOI認可事業]
12月2日認可46事業
コメント