2026年10月8日(木)号

JSCCIB、成長率予測2.1~2.5%=洪水・航空貨物対策、官民連携を提言

 商業・工業・銀行の経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)は10月7日の月例会見[=写真]で、今年のタイの経済成長率予測を従来の1.6~2.0%から2.1~2.5%へ引き上げた。輸出伸び率も8.0~10.0%から12.0~16.0%へ上方修正した。一方、洪水などの自然災害が経済の構造的なリスクになりつつあると指摘し、水管理や災害保険、スワンナプーム空港の航空貨物問題への早期対応を政府に求めた。


 JSCCIBは、政府と民間部門がタイ経済の高度化に向け、方向性を共有しつつあるとの見方を示した。策定中の第14次国家経済社会開発計画では、GDP成長率を年3%超へ引き上げる方針が示されており、「Reinvent Thailand」の重点分野や世銀の提言とも方向性が重なるとした。第14次計画は2028年からの実施を予定している。
 官民連携では、Stabilize Today(現在の安定化)、Transition Now(今すぐ転換)、Invest for Tomorrow(明日への投資)の3段階で取り組む。第1段階では足元の障害を取り除き、第2段階で新技術や新基準への適応を加速。第3段階では未来産業、人材、インフラへの投資を通じ、持続的な成長力を高める。
 10月12~18日にバンコクで開かれるIMF・世銀年次総会には、各国の財務相、中央銀行総裁、政策担当者、企業関係者ら約1万5000人が参加する。JSCCIBは、9月のバンコク・ビジネス・サミット2026に続き、タイの潜在力や経済改革の方向性を世界へ発信し、投資家の信頼向上やタイ企業と国際市場との連携強化につなげる機会とみている。
 2028年にはタイがアセアン議長国を務める予定で、経済、企業活動、政府政策、国民生活に関わる課題への対応を進め、国際社会にタイの潜在力を示す機会として活用するよう求めた。
◆GDP・輸出見通しを上方修正
 2026年のGDP成長率予測は2.1~2.5%とし、従来の1.6~2.0%から引き上げた。輸出伸び率も8.0~10.0%から12.0~16.0%へ上方修正。インフレ率は従来と同じ2.5~3.0%を見込む。2025年の実績はGDP成長率2.4%、輸出12.9%増、インフレ率マイナス0.1%だった。
 一方、外部環境には不透明感が残る。中東情勢の不安定さや原油在庫の低さを背景に、原油価格は高止まりしている。米国の長期金利の上昇も企業の金融コストを押し上げ、タイを含む新興国市場からの資金流出やバーツ安につながるリスクがある。
◆自然災害を「構造的リスク」と指摘
 JSCCIBは、洪水などの自然災害がタイ経済にとって構造的なリスクになりつつあると指摘した。政府は自然災害による被害救済に毎年多額の予算を投じており、事後対応だけでなく、事前の備えとリスク軽減へ軸足を移す必要があるとした。
 現在の洪水は国民や企業、特に中小企業(SME)、農業、工業生産に影響を及ぼしている。中部や東部では自動車産業やサプライチェーンへの影響も懸念され、観光業にも波及している。資産被害の全体像はまだ把握できておらず、JSCCIBは家計・企業の債務負担の増加や投資家心理への影響も警戒する。
 JSCCIBは、災害発生後の救済中心から、防災と積極的なリスク管理へ転換し、気候変動への強靱性を高めるインフラ投資を進めるよう提言した。
 地域レベルの早期警戒システムも強化し、住民や企業が十分な時間を確保して備えられるよう、迅速で正確な情報を提供する必要があるとした。
 水管理では、貯水、送水、排水、遊水地の確保、経済地域や工業団地の防護を一体的に進める必要があると指摘。都市計画や土地利用も水の流れや洪水リスクを踏まえ、水路や遊水地を維持しながら地域社会と工業地域の開発を進めるべきだとした。
 災害保険制度の拡充も求めた。災害による経済的損失を抑え、生産活動の継続や投資家の信頼維持、長期的な水安全保障につなげる考えだ。
◆スワンナプーム航空貨物の改善要請
 スワンナプーム空港の航空貨物についても、ボトルネックの早期解消を求めた。今年1~7月の航空貨物による輸出額は約2兆4200億バーツで、輸出総額の約3分の1を占める。倉庫スペース、人員、機器、検査手続きなど複数の制約が貨物の滞留や混雑につながっている。
 9月末の大雨と洪水では人員や地上業務にも影響し、貨物の滞留が一段と深刻化した。航空貨物の混乱が長引けば、輸送コストや納期だけでなく、生産活動やサプライチェーン、国際的な物流拠点としてのタイの信頼性にも影響しかねない。
 年末の観光・物流の繁忙期に加え、IMF・世銀グループ年次総会も控えるため、政府と関係機関が連携し、空港や物流サービスを早期に正常化するよう求めた。
◆首相に洪水対策を提言へ
 JSCCIBは首相宛てに書簡を提出し、洪水への事前対策を政府が早急に検討するよう要請する。民間部門の代表を国家水資源委員会に加えることも提案する。
 国家水資源事務局(ONWR)の水管理関連3分科会にも民間代表の参加を求める。対象は①水資源管理マスタープラン・重要事業実行分科会、②水資源管理運営分科会、③水資源管理基準・技術革新開発分科会。政策や対策に企業、農業者、国民の実情やニーズを反映させる狙いだ。
 JSCCIBは同時に、洪水の影響を評価し、事前準備と復旧策を検討する特別作業部会の設置を決めた。水管理全体を対象とする統合計画をまとめ、被災者支援と経済活動の早期回復につなげる。

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